らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

た行の作家

「クリスマス・キャロル」ディケンズ・チャールズ

今年最後の本記事は、やはり文学のブログらしく、文学の記事で締めようと思います。クリスマス文学の定番「クリスマス・キャロル」 。https://youtu.be/GSo2HBblD6g一般に知られているあらすじを述べますと、人嫌いで意地悪でケチな老人スクルージのもとに、…

「雪に埋もれた話」土田耕平

これは雪女の逆バージョンのような物語です。山に柴刈りにきたお秋さん。突然、山で雪に降られ、あっという間に胸のあたりまで埋もれてしまいます。もう助からないと気を失いかけた瞬間、どこからか自分を呼ぶ声がします。ふと気付くと、大きな洞穴の中に立…

「教科書名短篇」シリーズ 中公文庫

教科書名短篇「少年時代」https://honto.jp/netstore/pd-book_27752586.html 3月は「教科書名短篇 少年時代」に掲載されている作品をいくつか読んで参りましたが、いかがだったでしょうか。実は、ずっとこれを読んできたのには理由があります。「教科書名短…

「地震雑感」寺田寅彦

このたびの熊本地震で亡くなられた方々に哀悼の意を表すとともに、被災された方々に対しまして心よりお見舞い申しあげます。 今回の作品は関東大震災を経験した夏目漱石の門弟である物理学者寺田寅彦が、地震について、その概念、震源、原因、予報と項立てし…

「時をかける少女」筒井康隆

この小説が書かれたのは、昭和40年頃だそうですから、なんと、もう50年あまりも経つことになります。 この作品は、SFの衣を纏った出会いと別れのストーリー。現在の、SFのネタが出尽くされた感覚からすると、そのSFの仕掛けは、とてもシンプルなものに感じ…

「狼の怪」田中貢太郎

今、子ども達の間では妖怪ウォッチなるものが大流行しているとか。そこで今回は、それに触発され、青空文庫に何か妖怪ものがないか探してみたところ、いくつか発見しました。今日の記事は、その中のひとつ、田中貢太郎「狼の怪」。なんでも中国の化け物、妖…

「レモン哀歌」智恵子抄より 高村光太郎

レモン哀歌そんなにもあなたはレモンを待つてゐたかなしく白くあかるい死の床でわたしの手からとつた一つのレモンをあなたのきれいな歯ががりりと噛んだトパアズいろの香気が立つその数滴の天のものなるレモンの汁はぱつとあなたの意識を正常にしたあなたの…

「智恵子の切り絵」高村光太郎

高村光太郎は、妻智恵子に数多くの詩作を残しましたが、実は智恵子も夫光太郎のために、或る作品をいくつも残しました。今日はこの、智恵子が残したこれらの作品についてのお話です。智恵子が最晩年に東京北品川のジェームス坂病院に入院していた時、夫高村…

「智恵子の半生」高村光太郎

ご存知ない方もいらっしゃるかと思いますが、高村光太郎の妻智恵子は洋画家を志した芸術家志望の人でした。この有名な平塚雷鳥らによる雑誌「青鞜」創刊号の表紙は、結婚前の26歳の時に、智恵子が制作したものです。玄人はだしのセンスの良さを感じさせる…

「値(あ)ひがたき智恵子」智恵子抄より 高村光太郎

http://touhoku.sakura.ne.jp/chiekokoutaro.jpg 発症後療養地での高村光太郎と智恵子夫妻 値(あ)ひがたき智恵子 智恵子は見えないものを見、聞えないものを聞く。智恵子は行けないところへ行き、出来ないことを為(す)る。智恵子は現身(うつしみ)のわ…

「樹下の二人」智恵子抄より 高村光太郎

http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/e6/eef54097d94a977bdd8bdad688876557.jpg 一番幸せな時期だったといわれる高村光太郎と智恵子夫妻 樹下の二人――みちのくの安達が原の二本松松の根かたに人立てる見ゆ――あれが阿多多羅山、あの光るのが阿武隈川。か…

「共喰い」田中慎弥

これが、今年初めての読書の記事となります。この作品は、平成24年第146回芥川賞を受賞したもので、実は、昨年の年の瀬、まだ父が生きていた時に、帰省の道すがらの電車の中で読んでいた作品です。作者の田中慎弥氏は、この作品により芥川賞を受賞しま…

「回想の太宰治」津島美知子

前回紹介した1994年(平成6年)夏に放送された「人間・失格」~たとえばぼくが死んだらというドラマ、http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/11743208.html実は、最初、「人間失格」という太宰治の小説の題名そのままズバリのドラマタイトルでした。…

「太宰治との一日」豊島 与志雄

この作品の筆者である豊島与志雄は、作家というよりも、翻訳家として知られた人物であり、太宰治が死ぬ数年前から仕事を通じて交流するようになったようです。いわば、仕事で懇意になった知り合いというところでしょうか。そのせいか、太宰の死に関する文章…

「さようなら」田中英光

先日、ロンドンオリンピックにちなんで、「オリンポスの果実」というオリンピック選手の青春を描いた、田中英光の作品を紹介しましたが、今回は、その遺作「さようなら」です。彼の言うように「さようなら」という言葉は、他の外国語の言葉に比べると、切な…

「オリンポスの果実」田中英光

ただ今、ロンドンオリンピック真っ盛りで熱戦が続いていますね。ところで、オリンピックをテーマにした小説があるのか?と問われれば、実は、これがあるんです。田中英光という作家の「オリンポスの果実」という作品なんですが、作者自身、1932年のロス…

「童話集 春」2 竹久夢二

今回は「童話集 春」19編のうち7編を読みました。「誰が何時何処で何をした」「風」「春」「玩具の汽缶車」「クリスマスの贈物」「おさなき灯台守」「日輪草」の作品です。前回は女の子が主人公のお話ばかりでしたが、「誰が何時何処で何をした」は中学生…

「童話集 春」竹久夢二

竹久夢二は大正浪漫を代表する画家です。「夢二式美人画」という言葉は知らずとも絵を見れば日本人で知らない人がいないくらい有名なタッチの絵です。なんでも夢二式が現れる前までは美人の絵は切れ長の目ばかりで、ぱっちりした大きな目の美人のものは夢二…

「蒲団」田山花袋

この作品に関しては初見ではありません。高校生の時、一度読んだものの、思春期の未熟の極みかラストシーンの描写に惑わされその他の内容はあまり記憶にないんですwそれはさておき、今回読み進めていくうちに、あーなるほどなるほど。という感じで、自分で…

「一兵卒」田山花袋

田山花袋は日露戦争時従軍記者として戦地の、満州に渡ったとの事ですが、その体験を基に書いた一無名兵卒の話です。冒頭から暗くて重い雰囲気が作品全体を覆っています。それはあたかも寒々とした満州の原野を病身ながら重い装備を背負ってよろよろ歩く主人…

「夏目漱石先生の追憶」追記 寺田寅彦

「先生からはいろいろのものを教えられた。俳句の技巧を教わったというだけではなくて、自然の美しさを自分自身の目で発見することを教わった。同じようにまた、人間の心の中の真なるものと偽なるものとを見分け、そうして真なるものを愛し偽なるものを憎む…

「夏目漱石先生の追憶」寺田寅彦

今回は寺田寅彦が師匠の夏目漱石を懐かしみ出会いから死に至るまでを回想した随筆です。彼が熊本の旧制高校時代の英語の先生が夏目漱石だったそうで、この文章の寺田寅彦は先に読んだ「俳句の精神」と異なり、すっかり旧制高校の学生服を着た生徒に戻り親愛…

「俳句の精神とその修得の反応」‐俳句の精神‐続き 寺田寅彦

昨日の続きです。なんだ昨日の高校国語の教科書みたいな文章かなどとおっしゃらないで。今日読んだ部分は寺田先生が真面目にキテレツなことも論じていてなかなか面白いんですよ。昨日の大雑把なまとめで短歌俳句というのは人間を自然の一部と捉える日本人の…

「俳句の成立と必然性」‐俳句の精神より‐寺田寅彦

「好きなもの イチゴ珈琲花美人 懐手して宇宙見物」寺田寅彦作の短歌です。明治時代の人としてはなかなか洒落っ気のある人ですね。寺田寅彦は夏目漱石の高弟の一人で東大の教授にして物理学者。理化学研究所にも所属していたバリバリの科学者です。この作品…

「四国遍路日記」種田山頭火

今日は山頭火さんと四国遍路の旅を一緒に歩いた。前に読んだ九州の旅よりもなんとなく穏やかな旅。旅の道連れも入れ替わり立ち替わりありにぎやかな感じだ。お遍路さんのルートということで四国の人は勝手を知っておりもてなし慣れしているのだろうか。徳島…

「野口英世博士の生家を訪ひて」土井晩翠

本日は土井晩翠の新聞寄稿文です。さて今回は野口英世の生家を訪れた土井晩翠が野口英世の業績をたたえ記念館建設に賛同して欲しいという内容の文章です。土井晩翠といえば荒城の月の作詞家の他に高校野球の校歌斉唱の時たまに名前が挙がる人、そう文語調の…

「行乞記」種田山頭火

「朝湯こんこんあふるる真ん中のわたくし」「分け入ってっても分け入っても青い山」「窓開けて窓いっぱいの春」「まっすぐな道はさみしい」今挙げた俳句を見て面白いと思った方は種田山頭火の事をおそらく好きになれるはずです。山頭火は自由律俳句の大家と…