らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

な行の作家

「胡桃割り」永井龍男 教科書名短篇より

「教科書名短篇 少年時代」の最後に取り上げる作品は、永井龍男「胡桃割り」。作品を通して読んで思うのは、物語の構成が、実に上手いということ。ある日の午後、神宮に六大学野球を観に行った帰り、私は友人の絵描きの家を訪れます。そこでデザートに出され…

「秋の一日」野上弥生子

http://www.toshin.com/center/sp/kokugo_mondai_2.html 恒例のセンター試験国語小説文の読解。今年は野上弥生子「秋の一日」。病弱で長らく外出できなかった妻が、久しぶりに家族と一緒に外出して、上野に絵画を見に行くという作品。秋のまったりとした雰囲…

「蟹のしょうばい」新美南吉

先月は猿をテーマとした記事を書きましたので、今回はその代わりというわけではありませんが、蟹をテーマとした作品を紹介します。作者は新見南吉。真面目でお人好しの蟹が、自分の得意なことを活かして床屋になります。店がひまなので御用聞きに出るのです…

「こぞうさんのおきょう」新美南吉

スタジオジブリに「となりのトトロ」という作品があります。制作されて、すでに30年近くが経とうとしていますが、テレビで放映するたびに高視聴率を記録し、いまだ高い人気を保っています。どういうストーリーかといいますと、一見たわいないといいますか、…

「西瓜」永井荷風

去り行く夏に捧ぐ持てあます西瓜ひとつやひとり者荷風冒頭の俳句が、この作品の雰囲気というものを非常によく表しているように感じます。永井荷風は、主に大正から昭和の戦後にかけて活躍した文筆家です。代表作は「墨東綺譚」など。これは少し前に映画にも…

「凧になったお母さん」原作 野坂昭如

野坂昭如氏は、自らの戦時体験(終戦時15歳)を基にして、いくつかの戦争童話を書いています。これはその中の一編です。野坂氏の作品は青空文庫等では見ることができませんので、まず今回はあらすじベースで記事を書きます。なお、原作をアレンジしたアニ…

「飴だま」新美南吉

春の暖かな日に、2人の小さな子どもをつれた女の旅人が渡し舟に乗る。そして遅れてやってきた侍を乗せ、舟はゆっくりと岸を離れる。春のぽかぽかと暖かい、穏やかな、時間がゆっくりと流れゆくような感覚。まるで春の温(ぬる)んだ川の流れのように。その…

「デンデンムシ」新美南吉

皆さんは新美南吉という作家をご存知でしょうか。愛知県出身で、18歳で上京し北原白秋の門下となり、鈴木三重吉主宰の「赤い鳥」に作品をに発表。しかし、在京中に病に倒れ、帰郷後まもなく29歳で結核で亡くなりました。実は、自分の母は、愛知県の、新…

「牛人」中島敦

この物語は「春秋左伝」という二千数百年前に中国で書かれた書物を題材にしたものです。原典では、魯の国の大夫(貴族)叔孫豹(しゅくそんひょう)の執事の豎牛(じゅぎゅう)がその信頼をいいことに、主人を欺き後継ぎの息子を殺させ、最後は主人自身を餓死…

「きけ わだつみのこえ」日本戦没学生の手記

本日8月15日は66回目の終戦記念日。最近原爆忌やら終戦記念日が惰性で、年中行事化してしまっている風潮があります。それに抗して日にちをずらして記事を書こうとも思いましたが、やはり本日は戦没された方全員の御霊を鎮魂できる唯一の日であると思い…

「名人伝」中島敦

中島敦は、中国の古典を題材とした作品も多く、「名人伝」は今から二千数百年前の春秋戦国時代を舞台としています。主人公紀昌は弓の名人となるべく名人飛衛の元を訪れトレーニングを始めます。そのトレーニングの方法が極めてユニークです。まず最初の2年…

「近藤勇と科学」直木三十五

直木賞というと芥川賞と並ぶ文学賞の双璧で誰もが認知しているという感じですが、その沿革となった作家、直木三十五の作品を読んだことがある方は、それほど多くないのではないでしょうか。そもそも直木賞は純文学に与えられる芥川賞に対し、大衆文学に与え…