らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「野口英世博士の生家を訪ひて」土井晩翠

本日は土井晩翠の新聞寄稿文です。

さて今回は野口英世の生家を訪れた土井晩翠野口英世の業績をたたえ記念館建設に賛同して欲しいという内容の文章です。
土井晩翠といえば荒城の月の作詞家の他に高校野球の校歌斉唱の時たまに名前が挙がる人、そう文語調の厳めしい感じの校歌ですが、校歌作詞を多く手掛けていたつながりから教育目的の記念館建設事業にも関わることになったのでしょうか。

野口英世の人生及び業績というとこの文章に書かれているものが一般的です。子供が読む伝記シリーズの内容はほぼこれに沿っていると言ってよいでしょう。
しかし近年久しく野口英世の医学的業績の否定及び人格の面から否定的に見る見解が有力です。
まず医学的業績の否定ですが「小児麻痺の病原体の特定」「狂犬病の病原体の特定」については現在ウイルスが原因のものと確定され、南米で発見したといわれる黄熱病菌発見もワイル氏病と誤認していたと確定しています。
とすると確かに学者としてはその業績のほとんどを否定せざるを得ないでしょう。
しかし南米で多くの人を救ったのは動かざる事実であり医師としての業績は未だ不動のものと思われます。

次に人格の問題。幾度となく借金踏み倒し、自己主張の強い協調性のない性格等々。
確かに金銭の管理に関しては本当にダメな人です笑。弁護の余地はほとんどありません。
その彼が現在千円の肖像になっているとは何たる皮肉でしょう。もし野口英世がそれを知ったらどう言うでしょうか。

しかし不思議なのは要所要所で彼を支える人間が必ず現れているということです。小林榮氏、血脇守之助氏等々ですが血脇氏などは自らも結婚してるのに月給7円のうち2円を野口に渡してたりしています。これは欠陥はあるけども憎めない何か応援したくなるような吸い寄せられる人間的魅力があったに違いありません。
まず努力が半端でない。米国では人間発電所とあだ名され不眠不休で研究していましたが彼の実力は人並みはずれた努力に裏付けされたもので人の足をひっぱったりというような政治的工作によるものではありません。
コネでもありません。むしろこれほどコネのない人も珍しいくらいです。

裸一貫で自分の腕だけ勝負なのですから少々強引なのもやむを得ない。
最近の日本人はこういういい図々しさが足りないかもしれません。
あと自己主張の強さも実力主義の米国では幸いしたと思います。
米国というのはやはり凄い国です。
日本人の片手が不自由なロクに大学も出ていない平民の男の実力を認めて名だたる研究機関の首席研究員にしたのですから。

かように米国で不動の地位を築いた彼が50歳を越えてアフリカくんだりまで研究に出向いたのはなぜでしょう。
面子のためなら米国に居ながらにして取り繕うことができたでしょう。
やはり医学者としてプライド、使命感、自信といったもののような気がします。
自分の努力実力を信じてプライド持って物事に当 たっていく。これはどんな分野でも重要なことで今の教育に是非とも必要な要素だと自分は思います。


ですから私は土井晩翠氏提唱の野口英世記念館建設に賛同するものであります。
…もう猪苗代にできてますけどね。