らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「童話集 春」竹久夢二




竹久夢二は大正浪漫を代表する画家です。
「夢二式美人画」という言葉は知らずとも絵を見れば日本人で知らない人がいないくらい有名なタッチの絵です。
なんでも夢二式が現れる前までは美人の絵は切れ長の目ばかりで、ぱっちりした大きな目の美人のものは夢二がさきがけのようです。
夢二は現在の少女マンガに至るぱっちりした大きな目の女性の絵の元祖というわけです。
そのキャラは一時期人生をともにした愛する女性がモデルとなっているとのことです。

夢二は若い頃は甘いフェイスのなかなかのイケメンです。
何人もの女性と浮き名を流したりしましたが、昭和に入ってからはなかなか思うようにいかず不遇の毎日を送っていたようです。
そんな夢二も中年になって子供のために童話や絵を描いたりしていました。

今回は竹久夢二が書いた童話集「春」を紹介します。
19編あるうち今回は8編読みましたのでそれについて書きたいと思います。

楽しい話も悲しい話もありますが、共通して言えるのは大人が読んでも充分読みごたえある作品であるということです。

自然の観察という視点では宮澤賢治には劣るやもしれませんが、どの作品を読んでも思わず共鳴してしまうのは、絵空事として創作したのではなく、夢二自身が独自の感性で子どものしぐさやら心やらをよく観察していたからではないかと思います。
どの作品も子どものたわいない日常の出来事から題材をとっており、ともすれば見逃してしまうようなものばかりです。
夢二の視点の鋭さ、豊さ、愛情といったものを感じます。

今回読んだのは
「朝」「夜」「人形物語」「博多人形」「先生の顔」「大きな蝙蝠傘」「大きな手」「最初の悲哀」

その中で最も好きなのは小さな子どもが朝起きるときと夜寝るときの物語「朝」「夜」ですね。
読み終わるとその物語の中の母親になったような思わずにっこりと微笑んでしまうような気持ちになります。

「人形物語」「博多人形」は小さな女の子のお人形さんに対する愛情溢れる物語です。
小さい女の子ってお人形さんが大好きじゃないですか。
娘が居なかった夢二がよくそのような少女の心を描くことができたなと思います。

「先生の顔」「大きな蝙蝠傘」「大きな手」「最初の悲哀」はもう少し大きくなった10代の少女の話です。
成功しているかどうかはともかく「大きな手」は全てが少女たちのおしゃべりで構成されている興味深い作品です。
この中で一番好きな作品は「先生の顔」ですね。担任の女の先生が大好きな少女の心の揺れ動きがいじらしく表現されていて、最後の先生の手紙の締めも少女の不安な心を優しくつつみこむ感じで読んでいてホッとするというかニコッとするというか…なかなかの佳作だと思います。

今回はこの8編ですが、残りの作品も読めば記事を書きたいと思ってます。
1編5分あれば読める短い作品ばかりなのでぜひ読んでみてください。