らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「童話集 春」2 竹久夢二


今回は「童話集 春」19編のうち7編を読みました。
「誰が何時何処で何をした」「風」「春」「玩具の汽缶車」「クリスマスの贈物」「おさなき灯台守」「日輪草」の作品です。

前回は女の子が主人公のお話ばかりでしたが、「誰が何時何処で何をした」は中学生くらいの男の子が主人公の作品です。
あの年頃の男の子が学校を抜け出して賑やかな街を昼間ぶらぶらするドキドキ感高揚感。すごくわかります。男の子特有の冒険心っていうんですか、あるんですよね。
とこれが時間が経つにつれて心細さがつのって学校に戻り、先生の顔を見てホロッとしてしまいます。
中学生の突っ張っても子供の部分が多分にあるというんでしょうか。
大人になって振り返ってみるとそういう部分やっぱりあるんですよ。
ストーリーの流れとしてはどことなく芥川龍之介「トロッコ」に似てますね。芥川ほどの精緻な構成はないんですけど、素直に少年の心が表現されており、こちらの方が明るくて軽いトーンで、こちらを好むという方もいらっしゃるかもしれません。
読み比べると面白いかもしれませんね。

この話の最後のオチに「誰が・いつ・どこで・何をした」という遊びが出てくるんです。
アトランダムにそれぞれの単語を選んで組み合わせると面白い文章になることがあるというゲームなんですが、これ自分が子どもの頃学校でやりました。
やったことある方いますか。戦前からあったものとは驚きでした。

「風」は風と帽子を擬人化した宮澤賢治タッチのお話です。
宮澤賢治ももちろんいいですが夢二の話もなかなかいいと思います。
平明な文体なので子どもにはこちらの方がわかりやすいかもしれません。

「春」は脚本形式の物語ですが、山彦を知らない子どもたちが先生に尋ねると、「馬鹿野郎って言ったら向うでも馬鹿野郎って返ってくる。こちらで何かやさしい事を言ってやれば、向うでもやさしい事を返してくる。」だから優しい言葉をかけてあげなさいという下りが非常に好きですね。
大人はこういうことを子どもに教えられる人でないといけないなと思いますね。

「玩具の汽缶車」は夢二が自分の子どもにオモチャの汽車を動かしながら作ってあげたような温かさを感じる話です。
「クリスマスの贈物」も同じような感じですが、最後の結末の女の子がちょっとかわいそうかな。でもあまり欲張ってはいけないと子どもに教訓を与えたのかもしれませんね。

「おさなき灯台守」「日輪草」はシリアスな話で前者は他人を救うために力の限り頑張る使命感みたいなものがメッセージだと思うのですが、後者は心をかけていても日輪草(ひまわり)は枯れてしまいます。
夢二はこのようなハッピーエンドでない話をどうして入れたのでしょうか。
おそらく夢二は悲しみを知ることは人に優しくできることにつながると思い、こういう話を入れたのだと思います。
昨日紹介した「最初の悲哀」も同じでしょう。

ところで明日4日(土)夜10時テレビ東京系「美の巨人たち」という番組で竹久夢二「黒船屋」について放映されます。

実をいうと「童話集 春」は「美の巨人たち」で竹久夢二をやると知って何か読んでおこうと思い、青空文庫でみつけたものです。

この番組は10年来視聴していますが、タレントなど出演せずナレーションだけで1枚の絵についてじっくり解説してくれる非常に素晴らしい番組です。
「黒船屋」は竹久夢二の代表作ですし、興味のある方はぜひご覧ください。
自分も見て感想記事書くつもりです。