らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

か行の作家

「雪女」小泉八雲

先週末、首都圏は何十年ぶりともいう大雪に見舞われました。この時は雪のみならず台風のような大風も吹き荒れ、横浜の街は、自分が今までに体験したことのない猛吹雪となりました。その時、自分は、と言いますと、その数日前から喉風邪を患い、それに伴う熱…

民間伝承「笠地蔵」

何となく今年はよい事あるごとし元日の朝晴れて風無し石川啄木元旦の朝も明けましたね。みなさん、あけましておめでとうございます。自分は、この歌のようなささやかな思いを、今年は大切にしてゆきたいと思っています。ささやかと申しますと、些細なとか、…

「積もった雪」金子みすゞ

上の雪さむかろな。つめたい月がさしていて。下の雪重かろな。何百人ものせていて。中の雪さみしかろな。空も地面(じべた)もみえないで。金子みすゞは、東日本大震災の年、テレビCMの「こだまでしょうか」の詩で、一躍広く知られるようになりました。今…

「桶狭間合戦」菊池寛

もしタイムマシーンがあったら、どんな歴史的エピソードを見たいかという話題がよくあります。見たいものは無数にありますが、ドラマチックな瞬間という観点からすれば、浮かぶのは2つ。まずひとつは、幕末の長州で高杉晋作がわずか数十人の同士で決起した…

「鎮西八郎」楠山正雄

三国志演義などを読みますと、人並みはずれた武勇の持ち主、いわゆる豪傑と言われる武人達が、きら星のごとく登場します。劉備の義兄弟関羽と張飛、宿将趙雲や呂布などなどですが、彼らの一騎当千の活躍はやはり戦場の華であり、思わず人を惹きつける魅力み…

「無名作家の日記」菊池寛

この作品は、当時無名だった菊池寛が、中央公論の編集者の目に止まり、その名を、世に初めて知らしめた最初の作品です。この物語を一言で言うと、互いに、しのぎを削りながら、文壇で名を成すことを目指す仲間同士の人間模様を描いたものといったところです…

「小説家たらんとする青年に与う」菊池寛

現在、純文学最高峰の賞といわれる芥川賞を創設し、「文藝春秋」の創設者でもある菊池寛が書いたエッセイ。菊池寛といえば、作家としての力量は、夏目漱石、芥川龍之介らの一流の面々と並べられるとそこそこ程度に甘んじてしまいますが、プロデューサー、つ…

「白雪姫」菊池寛訳

グリム童話「白雪姫」というと、継母にうとまれた白雪姫が、城を追われ、七人のこびと達と、森で生活を共にするようになるのですが、継母に騙され、毒リンゴを食べ死んでしまうも、最後は王子様のキスで目覚め、めでたしめでたし。というお話だったと思いき…

「耳無芳一の話」小泉八雲 おまけ話

平清盛が平治の乱で実権を握って20年で清盛が死去し、その5年後、壇ノ浦の戦いにて平家は滅亡しました。平家が栄華を極めたのは、たかだか二十数年間。例えて言うなら、21世紀になり実権を握って、今年くらいに一族全滅してしまうくらいの期間です。本当…

「耳無芳一の話」小泉八雲

小泉八雲の「耳無芳一の話」、改めて読んでみると、不思議に、知らず知らず、物語の音というものに意識が向いてしまいます。芳一を連れて行く鎧武者の甲冑がこすれる音、連れて行った先の、女達のひそひそ声。芳一がかき鳴らす琵琶の弦の音と、しんと静まり…

「美術上の婦人」岸田劉生

いわゆる「麗子像」で有名な画家岸田劉生(前掲自画像)は、美術にとつて人物を描くという事は、面白いと同時に、難しい事で、古来から美術作品中、その美的内容の最も深いところのものは、人物画に尽きると言います。すなわち、それは、人の顔が実に複雑で…

「ばけものばなし」岸田 劉生

斎藤茂吉関連の記事が、ずっと続きましたので、今回は少し趣向を変えて、岸田劉生の作品をお送りします。岸田劉生は日本を代表する画家の一人であることは間違いありません。代表作は「麗子像」。一度は必ずご覧になったことがあるのではないでしょうか。「…

「愛撫」梶井基次郎

この作品、題名だけを見ると何か艶めかしい内容なのかと思いきや、残念ながらそのようなものではありません(^_^;)これは猫が大好きな梶井基次郎が、猫好きの読者にのみ贈る、猫好きファン限定の猫かわいがりの作品なのです。それを題して「愛撫」というわけ…

「蘭学事始」菊池寛

菊池寛「蘭学事始」は江戸中期解体新書発行に携わった杉田玄白と前野良沢のストーリー。杉田玄白著「蘭学事始」に肉付けして小説化したものです。学校で習う時2人の名前は並列的に並べられるだけですが、読んでみると2人の性格や人生観などかなり異なるこ…

「反逆」菊池寛

この物語は、幕末から維新に世の中が大きく変化する時期に、その大波に翻弄されたとある桑名藩士の生き様を描いたものです。いわゆる幕末維新の戦いで負けた側の人々の話ですね。自分達は、長州の高杉晋作、薩摩の西郷隆盛、大久保利通、土佐の坂本龍馬など…

「方丈記」鴨 長明

本日読んだのは鴨長明「方丈記」です。冒頭部分の「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世の中にある、人と栖と、またかくのごとし。」は無常観を見事に表現した…

「武蔵野」国木田独歩

今回は国木田独歩の代表作「武蔵野」を読んでみました。これは一言でいえば武蔵野の自然賛歌といったもので、小説というよりは、長文の散文詩がごときリズミカルで、武蔵野の自然に対する賛美に満ち溢れています。まるで武蔵野が呼吸をして生きているがごと…

「檸檬」梶井基次郎

中学生の時隣の席に座っていた女の子がおしゃべりしているのをなんとはなしにぼんやり聞いていた。「私今ね、梶井基次郎の「檸檬」ていうの読んでるんだけど結構好きなの。」中学生の頃なんて女の子同士の話に割っていけるほどの度胸もない。その話はそのま…

「南予枇杷行」河東碧梧桐

今日は高浜虚子と共に正岡子規の高弟と並び称される河東碧梧桐の作品です。名前が難しいですが「かわひがしへきごどう」と読みます。南予つまり現在の愛媛県南部を旅した紀行文で、節々で旅の俳句を詠んでいると思いきや一首も詠んでいません。この旅で俳人…

「久坂葉子の誕生と死亡」久坂葉子

この文章は久坂葉子さんが本来の川崎澄子に戻って久坂葉子という存在を論じたものです。彼女の作品は順に「入梅」「落ちてゆく世界」「灰色の記憶」「華々しき瞬間」「幾度目かの最期」となりますが「落ちてゆく世界」で芥川賞候補になり意欲的に「灰色の記…

「鱧の皮」上司小剣

一発で題名と作者名が読めた人はかなりの実力です。正解は「はものかわ」「かみつかさしょうけん」。ほとんど忘れられた作家といえるかもしれません。自分も今日まで知りませんでした。大阪の道頓堀で鰻屋を営む女将お文のなにげない一日を描いた物語ですが…

「入梅」久坂葉子

三日連続で久坂葉子さんになってしまいましたが、小説家としての彼女の力量を垣間見るまではと今回選んだのは「入梅」です。この物語はいろいろな人のいろいろな人への想いが交差します。自分の死んだ夫に対する想い、年老いた使用人の亡き妻への想いまた若…

「幾度目かの最期」久坂葉子

昨日に引き続き久坂葉子さんの「作品」です。今回紹介する「幾度目かの最期」を書き上げたその日に彼女は自殺しました。死の本当の直前に書かれたものなので彼女の人生の本質にかかわる核心部分の心情が吐露されているのではないかと思い読んでみました。文…

「落ちていく世界」久坂葉子

彼女については全く未見でしたが、ウィキペディアで経歴を見ると「19歳で芥川賞候補となり、4度の自殺未遂の末、21歳の大晦日に阪急六甲駅で鉄道自殺」とあります。なんとも短くも激しい人生を送った女性がいたものだと思います。 「落ちていく世界」は…

「フランダースの犬」菊池寛訳 後編

予想外に前後編になってしまいすみません。「フランダースの犬」は小説としては必ずしも一流でないかもしれませんが、日本のある特定の年代に深い印象を与えてきたことは間違いないでしょう。自分もその中の一人で子ども時代からの総まとめみたいな感じで書…

「フランダースの犬」菊池寛訳 前編

本日は菊池寛訳「フランダースの犬」。日本で最も人気がある物語のひとつでしょう。昔読んだ翻訳家の訳本と内容が少し異なるような気もしますが、明治を代表する小説家菊池寛が、オリジナルに多少アレンジを加えて翻訳しているようで、通常の翻訳児童文学と…

「蒲生氏郷」幸田露伴

最近の世は戦国武将ブームらしい。人気があるのは伊達政宗、真田幸村、本多忠勝といったところか。あと姫若子長宗我部元親などの名も挙がっているようだ。しかし、今日読んだ蒲生氏郷の名前はとんと聞かない。若くして病没してしまったし、政宗の隻眼、真田…