らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「蘭学事始」菊池寛

菊池寛蘭学事始」は江戸中期解体新書発行に携わった杉田玄白前野良沢のストーリー。
杉田玄白著「蘭学事始」に肉付けして小説化したものです。

学校で習う時2人の名前は並列的に並べられるだけですが、
読んでみると2人の性格や人生観などかなり異なることがわかります。

杉田玄白は社交的でおおらかで根回し上手、
前野良沢は学者肌で妥協を許さない、悪く言えば偏屈な頑固者。
こんな2人が中心になって、
ターヘルアナトミアの翻訳という難事業に挑むというのは大変興味深い。

最近の風潮として価値観の異なる人間とは一緒に仕事できないごとき事がよく言われますが、
様々な価値観を持った人間が力を合わせて初めて難事業を完遂することができる、
解体新書発行はそのひとつであると思います。
玄白だけで良沢がいなければ解体新書はできなかったし、
良沢だけで玄白がいなければやはり解体新書はできなかった。そんな感じを思わせます。

小説は短編で細かい部分については触れられていませんが、
これらの事を踏まえて、種本の杉田玄白著「蘭学事始」を読めば楽しさ倍増な感じで読めそうな気がします。

最後に蛇足ですが、今日の本屋における語学書籍の充実ぶりはすごいものがあります。
これだけ揃って英語ひとつマスターできない現状ではあの世で彼らに合わせる顔がない(笑。

ただターヘルアナトミア翻訳開始したのが、良沢50歳玄白40歳くらいで、
おそらく開始時はアルファベットと単語100個くらいしか知らなかったわけですから、
為せば成らないことはないかもしれません。
自戒をこめて。

なお解体新書発行については、
前野良沢杉田玄白以外にも多くの人が関わり、
例えば解体新書の扉絵や図説を描いた小田野直武をとってもなかなか興味深い話があります。
また【人物列伝】解体新書に関わった人達という形で記事に書けたらと思います。