「飴だま」新美南吉
春の暖かな日に、2人の小さな子どもをつれた女の旅人が渡し舟に乗る。
そして遅れてやってきた侍を乗せ、舟はゆっくりと岸を離れる。
春のぽかぽかと暖かい、穏やかな、時間がゆっくりと流れゆくような感覚。
まるで春の温(ぬる)んだ川の流れのように。
そのうち侍は気持ちよさそうに、いねむりを始める。
その様子を嬉々としてみつめる2人の子供達。
しかし、春の川の流れのような穏やかな舟の中で、
小さなさざ波のような出来事が起きる。
1つしかない飴だまを、2人の子らがそれぞれ欲しがり、母親は困ってしまう。
このさざ波のような騒ぎに目を覚ます侍。
刀を抜いて母親と子どもらの前にやってくる。
舟の中は緊張につつまれ、
思わず母親は、身を呈して子どもたちをかばおうとする。
ところが、母親から飴だまを受け取った侍は、おもむろにそれを舟のへりにのせ、
刀で二つに割って、子どもたちに分け与えてやる。
そして、また元のところに戻り、こっくりこっくりと居眠りを始める。
何事も無かったように、また舟の上に、ゆったり穏やな時間が流れはじめる。
春の温(ぬる)んだ川の流れの中を、
母子と侍を乗せた舟は、静かに渡ってゆく。
この物語にあるのは、さりげない優しさ、そしてあたたかさ。
しかし、不思議と、そういうさりげない心持ちの方が、
きらびやかではないけれど、
心を、炭火のように、長くいつまでも温めてくれるような気がします。
ちなみに画像は、
この間、実家に帰った際、たまたま姪っ子の、国語の教科書を見ましたら、
新美南吉「あめ玉」が収録されており、
それを画像に撮ったものです。
どういう授業をするのか、とても興味ありますね。
特別にその時だけ授業参観させてもらおうかな(^_^;)