らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「デンデンムシ」新美南吉



皆さんは新美南吉という作家をご存知でしょうか。

愛知県出身で、18歳で上京し北原白秋の門下となり、
鈴木三重吉主宰の「赤い鳥」に作品をに発表。
しかし、在京中に病に倒れ、帰郷後まもなく29歳で結核で亡くなりました。

実は、自分の母は、愛知県の、新美南吉の故郷に実家が近く、
自分も子供の頃から、新美南吉作品に慣れ親しんできました。

新美南吉の作品は、小さな子供でも感じ取ることができる、
わかりやすさ、素朴さ、美しさのようなものがあるように思います。

しかし、といって子供向けかというと、そういうわけではなく、
大人でも十分深く味わうことができる作品の数々。
短い子供向けの童話と思われる作品でも、
どこか詩を感じさせるような美しさがあります。


今日取り上げる作品は、時節柄ぴったりな「デンデンムシ」。

お母さんのデンデンムシと、透きとおった殻をもつ赤ちゃんのデンデンムシのお話。

ご存知ですか?
赤ちゃんのデンデンムシって、殻が透きとおるような色をしているんですよ。
形はお母さんと全く一緒なんですが、小っちゃくて柔らかそうで、
本当に赤ちゃんって感じなんです。

お母さんデンデンムシの上に乗った赤ちゃんデンデンムシは、
見るものすべて新鮮で珍しく、
見たものを次から次からへと、お母さんデンデンムシに質問してゆきます。

お母さんデンデンムシは、それに対してひとつずつ、優しく丁寧に答えてゆきます。

いずれも母子の愛情あふれるやりとりなのですが、
朝露におけるやりとりは特に愛らしく、
葉っぱに乗った珠のような朝露の透明さ、美しさ、はかなさのようなものを感じます。

その葉っぱに似た白い蝶々が飛んでいった先に、
赤ちゃんデンデンムシは青く大きな空を見ます。

お母さんデンデンムシもわからない、遠くて不思議な青い空。

どこまでも広く美しい青い空につつまれて生きている、
小っちゃな赤ちゃんデンデンムシ。

梅雨の雨上がりの、透きとおった青い空なのでしょうか。


この作品は、数ある新美南吉の作品でも、
とりわけ美しく愛情あふれる一編であると感じます。
よろしかったらぜひ読んでみてください。