らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「近藤勇と科学」直木三十五

直木賞というと芥川賞と並ぶ文学賞の双璧で誰もが認知しているという感じですが、
その沿革となった作家、直木三十五の作品を読んだことがある方は、それほど多くないのではないでしょうか。

そもそも直木賞は純文学に与えられる芥川賞に対し、大衆文学に与えられるものとされています。
大衆文学とは娯楽性商業性を趣向とするもので芸術性を趣向する純文学と区別されますが、
両者相排斥するものでなく多分に相対的なものでしょう。

ただ大衆文学は娯楽性商業性を重視することから、その時々の流行りに敏感な部分があり、
年月の経過により古くなって読まれなくなっていく傾向があるようです。
要は今の時代の漫画みたいなものですね。

そういう理由から、大衆文学作家直木三十五の作品を読んだことがない人が多いのかもしれません。


この作品は、武士を夢見た新撰組薩長軍の最新式銃に全く手も足も出ず、
武士道という精神性の時代が去ったことを悟るということをテーマとしたものです。

いわゆる「固くない」作品なので、お昼ご飯のラーメンでも食べながらさくさく読めますし、
まさに今の漫画そのものという感じですね。

しかし考えてみると、明治維新では古い精神性から抜け出せなかった徳川幕府を、
進取の気質で圧倒した薩長軍及び新政府が、わずか70年あまりで古い精神性に固執し、
太平洋戦争で、多くの人を死なせる負け戦をしまったのは不思議で仕方ありません。
権力というのは頭を鈍くする要素があるのでしょうか。

近藤勇は武士道のような古い精神に殉じた人ですが、
土方歳三はそれらの物が古くて役に立たないとみるや、即座に捨て髷も落とし洋装した人です。
やはり実家は商人ですから、機に敏なところがあったのでしょう。
坂本竜馬も実家も、もとは武士の権利を買った商人ですから土方歳三と親和性があります。

どちらがいいということは一概には言えない。
生き方の問題でしょうね。

自分は基本土方歳三派でありたいと思っていますが、
近藤勇の自分が信奉してきた精神に殉ずるという生き方にも憧れありますね。


てなことをお昼ご飯を食べながら今日は考えていたのでした。