【漫画】キングダムと達人伝 始皇帝を描いた二つの漫画
キングダムという映画が今人気を博しています。
今から遡ること二千数百年前の中国。
当時7つの国に分かれ争っていた中国を統一しようと情熱に燃える
青年秦王政(後の始皇帝)と、その下で戦う武将李信を描いた作品です。
一般にはあまり知られていないマイナーな時代を舞台に、
様々な人々との出会いと別れ、友情・努力・根性という少年漫画風のペーストに、
登場人物を自由にのびのびと描いており、
自分も連載当初から愛読しています。
そこに描かれる秦王政は中国統一に情熱に傾ける英明果敢な君主そのもので、
他の六国の王に比べれば、
ダントツに魅力のある人物として描かれています。
さて、今、もう一つ秦王政を描いた作品があります。
「達人伝」
作者は以前「蒼天航路」という三国志の曹操を主人公とした漫画を書いていた人です。
主人公は荘子の孫荘丹。
キングダムより時代を遡ること十数年前の話というところです。
というわけで登場人物はキングダムとかなり重複しています。
というよりも、作者がキングダムを意識して、その人物を登場させている感すらあります。
そこに登場するまだ少年の秦王政。
人間の情や愛というものをこれっぽっちも信じておらず、
そのくせ頭脳明晰で、人の心の奥をじっと見透かしているような底の見えない恐ろしさ。
こんな人物が間近にいたら、緊張して身動きひとつできないかもしれません。
こんな人物に仕えるなら、少々愚鈍な六国の王の方がマシと思わせる、
底知れぬ恐怖を感じさせる怪物に描かれています。
ではどちらの秦王政(始皇帝)が実像に近いのでしょう。
実は始皇帝について、以前記事を書いたことがあります。
そこで書いた自分の始皇帝像は、世界の全ての富を手中にした。
この世の中で自分自身しか信じることできない人間の行き着く先。
https://motanmozo.hatenablog.com/entry/2016/09/21/182907
そうしますと、達人伝に描かれた始皇帝の方がより実像に近いといえます。
というか、よくぞこのような始皇帝像を描いてくれたと感心するところがあります。
一方キングダムの英明な、心に曇りのない中国統一に情熱を傾ける青年秦王政。
秦の武将となる少年が主人公なわけですから、
その君主である始皇帝が美化されるのは仕方がないところですが、
始皇帝の得たいの知れない心の闇については、
すっ飛ばしてしまっているところがあります。
この青年が、後に焚書坑儒や何十万という人間を死に追いやった大規模土木工事、
そして些細なことで一族皆殺しにするといった事はちょっと想像ができません。
というわけでキングダムは、おそらく秦が中国を統一した時点で完結すると、
自分は思っています。
一方、達人伝は、おそらく始皇帝の死まで描くことになると思います。
始皇帝の死により巨大な伽藍のような秦が数年であっという間に崩壊し、
主人公荘丹の老荘的理想が実現するのは、まさにその時であるわけですから。
達人伝の描く始皇帝の死に様をぜひ見てみたいと思っています。
そうだとしても二つの作品とも、
秦の中国統一まではまだまだなわけですから、当分は楽しめそうです。
それでは実際の始皇帝はどのような容貌の人物だったのでしょうか。
それを記した著述はほとんどありませんが、
「鼻が高く、目は切れ長で、 胸は鷹のように突き出ており、声は豺狼の如く、
恩愛の情に欠け、虎狼のように残忍な心の持ち主であった。」
皆さんはどのような人物を想像しますでしょうか。