らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】24 物皆は新しき良し

今回最も感じ入った歌は


物皆は
新しき良し
ただしくも
人は古(ふ)りにし
宜(よろ)しかるべし



詠み人知らず



物はみんな
新しいのがよい
ただし
人間だけは古くなった方が
よろしいようだ



金曜日の夜、会社を定年退職された方の送別会が行われました。
自分も大変お世話になったので参加したのですが、大変温厚で篤実な方だったので、
数多くの人が出席していました。

その方を思って選んだのが今回の歌です。

人間は年をとれば自動的に「宜しかるべし」になるわけではありません。
やはり「宜しかるべし」たるにはそれなりの努力が必要なようです。

人間は年を取れば取るほど、自分より年長の者がいなくなってくるので、
注意されたり叱られたりということがどんどん無くなっていきます。
そうすると自己の至らぬ点は自分でチェックして修正しなければなりませんが、
これがなかなか難しい。

あたかも自分で鏡を見て髪を切るがごとしなのですが、
やはり年下の者の指摘でも虚心坦懐に耳を傾ける柔らかな心が必要なのかもしれません。

あとやはり、新しいものに貪欲にチャレンジしようという頭の柔らかさが必要なのかもしれませんね。

柔らかで温かきものは生(せい)たるものであり、
固く冷たきものは死したるものであると言います。

頑(かたく)なで意固地な人間は、
固く冷たく生きながらにして半ば既に死んでいると言っていいのかもしれせん。

人間の心は形なきゆえ、すぐ変えられそうなものですが、そうでもないようです。

これは特に権力を握っていた人に顕著なようですが、
一度手に入れたものを何が何でも手放したくない執着心というんでしょうか、
それが過ぎることが多々あるようです。

それは時には、本人のみならず周囲の人々の人生まで巻き込んでしまう危険すらあります。

秦の始皇帝漢の武帝など歴史上の人物を引き合いに出すまでもなく、
今現在進行形の身近な例にも事欠きません。

自分が人生で得てきたものをなぜ分け与えようとしないのか。
分け与えれば種が播かれてあちこちで新たな芽を出して自分が死んでも生き続けるでしょうに。
なぜ執着して、人に奪われまいとするのか。

「人は古(ふ)りにし
宜(よろ)しかるべし」

自分が老人となった時、人からこう言われるのが目標ですね。

まだ何十年か猶予期間がありますので(^_^;)じっくりといろいろなものを吸収し、
年をとってから分け与えられるように。
また死ぬまで柔らかき頭と心を持ち続けられるように努めたいものです。