らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】「床に鉋(かんな)をかける人々」ギュスター・カイユボット

 
 
 
 
 
 
 
 
 
部屋のフローリングに鉋(かんな)を当てて
床をきれいに削っている半裸の男達。
とても力強さを感じます。

このオルセー美術館展では、男性の肉体の躍動感を表現する作品が、
他にもいくつかありました。
それは神話の世界の人々が格闘する描写であったり、
筋骨隆々として格闘しているプロの闘技者たちであったりしたのですが、



むろん見たくれの筋肉の大きさや量においては、
神話の世界の者達やプロの闘技者達と比較すると見るべくもありませんが、

不思議なことに、この絵の職人たちの方が、
なぜか筋肉の躍動感、力強さというものを感じたのです。

窓から入ってくる明るい光。
そして、床を削って、きれいに整えてゆく作業の工程により、
表面にこびりついていた古きものを削り取り、
新しいものに剥き変わる。
そんな新しいものに生まれ変わる予感を感じさせる明るさが、
この職人たちの肉体の躍動感にはあるのです。

この作品が展覧会に出展された19世紀後半、
日本も新しい明治の世に動き出していたように、
世界もまた新しい世に動き出しつつあったのかもしれません。
それは政治経済上のものかもしれないし、
科学技術上のものかもしれないし、
芸術上のものかもしれないし、
はたまたそれら全てであるかもしれません。
感じるところは人それぞれでしょう。


「床に鉋(かんな)をかける人々」。
題名だけ見れば、職人の淡々とした日々の一作業を描いたにすぎないようにも思われます。

しかし、職人たちの、床に鉋を当てる肉体の躍動に感じる
新しいものに対する予感。

肉体の躍動感、素晴らしさとは、
筋肉の量など、肉体それ自体の形から発せられるものではなく、
このような、人間の意識から発せられるものだったのだ。

この絵画は、自分にそのことを教えてくれた先生のような作品です。