らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】ゴッホとゴーギャン展 3 ゴッホ初期の作品











「古い教会の塔、農民の墓地」


塔が崩れ落ち、廃墟となった教会。 
その上空にはカラスが飛び回る。
地表にはいくつもの朽ちかけた十字架の墓。

題材だけ挙げると、非常に暗いものなのに、
意外に不気味さを感じない。

むしろ薄明かりの日の光りが差し込む明るさすら感じる。

一見、重く暗い連想をさせる対象の数々を描いた作品だが、
ゴッホは、丹念に対象を見つめ、その内面から異なるものを感じ取って、
それを見出だしたのだと思う。
この作品からは、か細くも力強いエネルギーみたいなものを感じる。
それは、農民のいとなみから発せられるもの。
農民のいとなみとは、日々、こつこつと蓄えらてゆく、
地に足を下ろした、地味ではあるが、どっしりと力強いもの。
そして、死してなお、そのいとなみはエネルギーを発し続けている。



実は今年、ブリューゲルバベルの塔という作品が日本にやってくる。





このバベルの塔に勝るとも劣らぬ力強さを、自分は、ゴッホの朽ちかけた塔から感じる。











「織機と織工」


織機についてゴッホの詳細なデッサンがいくつか残っている。






これらのデッサンをもとにゴッホは1枚の油彩画を完成させた。

デッサンが骨組みだとすると、それに色を重ねる行為は、いわゆる肉付けであり、
名画といわれるものは、得てして、がっちりとした骨格のうえに、
見合った筋肉を備えつけたものであると思う。
レオナルド・ダ・ビンチの作品などは、そのようなものを感じる。

しかし、素人目ではあるけれども、
この作品のゴッホは、まだ上手く骨格に肉付けできていないように思う。

ただ、それは、この絵に価値がないことを意味するものではない。
薄暗いカビの匂いが漂ってきそうな工場の中に窓から淡い日の光がさしこんでいる。
それはやすらぎとまではいかないまでも、
独特の、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
たぶん、それは、労働する者の実直な精神といったものを表したものであり、
ゴッホは曲がりなにも、それを表現できているのだと思う。