らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】「死の床のカミーユ」モネ

 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
画家モネの妻カミーユは次男出産後、体調を崩し、
幼い子供を残し32歳の若さで亡くなりました。

波間のようなゆらぎの中に、
死に逝く妻の顔が浮かんでいるように見えます。

死人の顔というのは、
独特な笑みを浮かべたような表情に見える瞬間があるものです。
それは安らいでいるようにも見えるし、
病により精魂使い果たしたようにも見える、移ろいゆく表情。

この絵の妻の表情には、彼女を美化するようなデフォルメは感じられません。
むしろその表情そのものを描き写して、
最期の死に顔をそのまま克明に描き切ろうと、
妻の亡骸と真っ直ぐに向き合う、
画家の気持ちが垣間見えるような気がします。

ゆらゆらと波間にゆらぐ妻の顔は、
やがては見えなくなっていってしまう。

そんな妻の死に顔を見守る者の心細さと、
愛する妻を見送る死に対する諦念と、
きれいな澄んだ水のさざ波のような中に
妻を葬ってやりたいという美しい気持ち。

それら入り混じった心の波間の中に、
妻の顔はやがて消えてゆく。


この作品を見た瞬間、最初、その死に顔の衝撃に思わず
ハッと胸を射抜かれたようになりましたが、
しかし、その後、心の全体からじわっと止めどなく涙が滲み出てくるような、
そのような気持ちになりました。

それは時空を超えて伝わった、
画家自身の心の有り様が現代で作品を見る自分にも伝わったのかもしれません。