「赤ちやん」平山千代子

しかし平山千代子さんの作品は、

屈託がない無邪気な初々しさにあふれています。
いい意味でアマチュアっぽいといいますか、

読んでいて思わずほんわかした気持ちになります。

この作品は１８歳で彼女が病気で亡くなった時、

遺品整理をしていたお父様が、

彼女の日記を発見し随筆として出版したものの一編であるようです。

そういう話を知って作品を読むと、彼女の無邪気さが却って悲しさを誘いますが、

おかげで見ず知らずの自分のような者も、作品を読んで温かい気持ちになれるわけです。

ほぼ同世代の女性として、２１歳で自殺した芥川賞候補作家久坂葉子さんの作品を、

以前取り上げましたけど、久坂さんはいい意味でも悪い意味でも、プロずれしてます。

それに対し平山千代子さんは、たぶん自分が作家だという意識はなく、

ひょっとしたら人に見られることすら意識せずに、

備忘録のような感じで書いていたと思われるような作品もあります。

人は他人に見られることを意識すると、知らず知らず、良きにつけ悪きにつけ創作し、

素の自分を隠してしまいがちですが、平山千代子さんのこの作品にはそれがありません。

ちょっと高校生くらいの女の子の日記を見てしまった罪悪感めいたものを感じないわけではありませんが、

無邪気で温かい家族愛に満ちた作品ですので、ぜひ読んでいただければと思います。