らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】17 山田かまち





先日自分は、18歳で亡くなられた平山千代子さんの記事を書きましたが、
その記事の投稿で、山田かまちを思い出したという方がいらっしゃいました。

皆さん、山田かまちをご存知でしょうか。

彼の略歴を紹介しますと
1960年群馬県高崎市に生まれる。
幼少の頃から画才を発揮し、水彩画、パステル、デッサンなど約1000点を制作。
そのほかにもノートに記された絵や詩は18冊分にもなる。
中学にはいると作曲や演奏など、音楽活動にも熱中、
ビートルズをはじめとするロックミュージックに傾注する。
1977年、高校1年の夏、愛用のエレキギターの練習中に感電し、不慮の死をとげる。
享年17歳。

死後、保管されていたノートなどを母親や恩師などが中心となり詩集などとして出版し、注目を集めた。
1992年には故郷に山田かまち水彩デッサン美術館が設立された。


その衝撃的な死にざまもあって、彼の作品が世に出た時は、
かなりセンセーショナルな取り上げられ方もされたようです。

当時は「夭折の天才」「早世の鬼才」などといわれ、テレビなどでもかなり話題になり、
彼の作品集のようなものもベストセラーになったように記憶しています。

しかし当時の自分はその賑わいの傍らを通り過ぎる通行人に過ぎず、
彼の作品というものに触れたことはほとんどありませんでした。

そこで今回は彼の作品をごく一部ではありますが紹介し、
自分なりに感じたことを述べようと思います。

彼の詩をいくつか読みましたが、あえてまとめますと
思春期の意気込みや焦燥感が強く表れた作品とでもいうんでしょうか。



感じなくちゃならない
やらなくちゃならない
美しがらなくちゃならない



何かをしなくちゃいけないけど、何をしなければいけないかわからず、探しもがいている。
といった心情が短い詩の中によく表れていると思います。

他にも同じようなテーマの詩はたくさんあるのですが、
今読むと少々生硬いといいますか、そのような印象も受けます。
ただその生硬さが、まさに青春の意気込みや焦燥感そのものですよね。

もう大人になって久しい自分から見ると懐かしさみたいなものすら感じます。
あー、こんな気持ちあったなあと…

彼の詩を見ると、長いものより短いものの方が、世代を超えて共感できる作品が多いようです。
しかし長い作品で、自分が感じ入ったものを一つ紹介します。



もっと考える時間を持ったほうがいいよ
君たちはいつだって有頂天になっている
そうしては また 気をめいらせているのさ
自分というものをどう思っているんだい
まるでほうり出されたハトみたいだ
動きまわっているだけさ
幸せは簡単にはみつからないよ
それでもいいんだろう、君たちは
自分が幸せをもとめているってことにも
気付いちゃいないんだからね
まるでね。
もっと考える時間を持ったほうがいいよ
君たちはいつも・・・・・・・・・・・・



思春期というのは漠然とした意気込みはあるものの、
頭の中が混沌ともやもやしていて、
なかなか自分の考えを言葉で捉えられないものなんです。
それを言葉でしっかり捉えてメッセージを発することができるというのは、
やはり早熟で非凡なものを感じます。
そしてこの詩は世代を超えたメッセージ性があります。
というより大人にこそ読んで欲しい詩ですね。

山田かまちについては、そのかわいらしいルックス、衝撃的な死、かまちという印象的な名前、
当時日本中の中学高校が荒れていたので、
その世代の代弁者・象徴としての位置づけからセンセーショナルに持ち上げられただけで、
作品は大したものではないという意見もあるようです。

確かにマスメディアの取り上げ方はそのようなエピソードを強調したものだったように思います。

「夭折の天才」「早世の鬼才」というような仰々しい冠は、彼にはふさわしくないような気がします。
もっと言えば詩人・画家という肩書きでさえ似つかわしくないように思います。

山田かまちくん

この呼び方が自分的には一番しっくり来るような気がします。

彼の作品は天才・鬼才の片鱗というよりは、
なんとなく思春期の幼さ・未完成というようなものを感じることが多々あります。
ただそれこそ彼の作品の魅力なんですね。
だからこそ時代を超えて思春期の世代に共感を与える力を持つものだと思いますし、
その他の世代においても、思い悩んだ思春期を懐かしく顧みるというような
気持ちにさせてくれるのだと思います。

天才か鬼才かはわかりませんが、少なくとも様々な世代から共感を受け得る
豊かで鋭い感受性をもった少年であったということは間違いなくいえます。

最後に自分も大いに共感した、少年のほろ苦い思いを書いた詩を紹介します。




星のように

あの子はささやいて言った


「あなたは、かなり馬鹿だわ」


ああ厳しいんだな


世の中って・・・・