【美術】オランジュリー美術館展4 ルノワール×セザンヌ×モネ
オランジュリー美術館展で、ルノワールの作品が飾ってある部屋に入った瞬間、
A さんの足がピクリと止まって、あっ!?と小さくつぶやきました。
「どうかした?」と尋ねると一言「格が違う。それを感じた。」
彼女が足を止めた作品はこちらです。
ルノワール「桟敷席の花束」
一見何の変哲もない薔薇の花束ですが、
みずみずしく、つややかで生命力に溢れている 。
実はそれは自分も感じました。
他の画家が描くどの静物画よりも、いや、どの人物画よりもそれは際立っていて、
生命力ほとばしる瑞々しさを解き放っています。
ただ写真を通して見ると、その魅力は半減してしまうところがあります。
なぜならば、こういう写真というのは全平面を均一に写し撮るものであって、
目が引き付けられるところをデフォルメして見るようにできている人間の視点とは違うもの。
素晴らしい名画というのは、おしなべて、
そのような人間の主観的な目を意識して描かれているものと感じます。
「桃」
ルノワールを書いた桃の静物画。
これについても薔薇の花束とほぼ同じことが言えますが、
もしかしたら、燃えるような瑞々しい生命力に満ちた桃は、薔薇の花束のそれに勝っているかもしれません。
今回の美術展で見た中で、どの絵が一番良かったかAさんに尋ねたところ、
彼女が答えたのはこの作品でした。
実は前に見た、ルノワールの映画「日だまりの裸婦」で、
女性にポーズを取らせながらルノワールが絵を描いていて、
モデルの女性が書いてる絵を覗いてみると、
キャンバスには果物を描いているというシーンがあります。
モデルが不満を漏らすと、
ルノワールは一言「これでいいんだ」
モデルの女性のみずみずしい生命力にインスピレーションを受けて、
それを静物の中に仮託する。そんなところでしょうか。
セザンヌ「りんごとビスケット」
それはセザンヌのリンゴでも同じです。
隣にセザンヌの奥さんの肖像画もありましたが、
リンゴの方が、奥さんの何倍も艶やかで瑞々しく生命力に満ちて表情が豊かなんです(笑)
2つ並んでいますと、奥さんの生気のなさが際立って、人によっては穏やか、もしくは静やかと評価するかもしれませんが、
やはり生気がなく、虚ろとすら感じざるを得ませんでした。
静物画と言うと、古い昔から貴族の邸宅の食堂の壁を飾るものとして珍重されてきたテーマでした。
一見すると、人物画や何かのストーリーを描いた絵画よりも、動きが乏しく、単調でつまらないもののように思いがちですが、
今回のルノワールとセザンヌの作品は、生命力に満ちて、表情力豊かで、
いつまでも見入ってしまう魅力に溢れています。
ひょっとしたら、自分が静物画に目覚めた瞬間だったのかもしれません。
モネ「アルジャントゥイユ」
そして最後に安定のモネ。
一見何の変哲もない水辺の風景を描いたものに過ぎませんが、
やはり思わず見入ってしまう魅力があふれています。何て言うのか、調和に満ちているんです。
対象の形と色と構図の調和が絶妙で、いつまで見ていても飽きない。
それはルノワールの桃やセザンヌのりんごでも同じことが言えます。
ルノワール、セザンヌ、モネは、印象派の画家として知らない者はいないほどの巨匠ですが、
やはり同時代のその他の画家に比べると、ひときわ秀でているといわざるを得ません。
しかし、その3人の中でも、モネは「睡蓮」「積みわら」のような同じテーマの風景画の作品を繰返し繰返し描きました。
その感性の絶妙なバランス感覚という点においては、
ルノワール、セザンヌよりもさらに半歩もしくは一歩秀でている。と自分は感じます。