【絵画】ルノワール展 2
今回のルノワールの美術展の中でも自分のお気に入りの作品です。
「ぶらんこ」
一見、何のたわいもない情景。
ブランコに乗る少女。そして、それを見守る大人達と幼い女の子。
木漏れ日の中、とても穏やかで幸せそうです。
絵を観ていると、
自分も、その木洩れ日の中にたたずんでいるような気持ちになってゆきます。
光の画家というと、一般にはレンブラントですが、
ルノワールの木漏れ日も、おさおさそれに劣るものではありません。
レンブラントの光は直線的ですが、
ルノワールの描く淡く広がる光も観る者の気持ちに、
安らぎと穏やかさを与える不思議な魅力に満ちています。
ルノワールもまた、光の画家の名に相応しいと感じます。
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会にて」
今回初来日のルノワールの代表作。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットに集う男と女たち。
彼らの表情は華やぎと愉しさに満ちており、
また同時に、不思議と、穏やかさと優しさに満ちているのを感じます。
じっくりと作品に描かれている人物をひとつひとつ見ていきますと、
それぞれの人物にそれぞれの愉しさ、穏やかさ、優しさといったものを感じることができます。
いわば、そこに集う人々の、それぞれの様々なかたちの幸せな気持ちを、
一枚の絵に詰め込んだ作品。
例えて言うなら、絵から様々な色合いの愉悦が放たれているという感覚でしょうか。
今回観た、たくさんの作品の中でも、
この一枚の中には、非常に多彩なものを描き込んでおり、
ルノワールの代表的大作といわれれば、自分もなるほどそうだろうと思います。
「ジョルジュ・シャルパンティエ夫人」
ルノワールの肖像画は、とりたて何かデフォルメをしているというわけではないのですが、
見ていると、まるで、すぐそこで、
呼吸をして存在しているような錯覚におちいる存在感があります。
リアルとも、写実的ともちょっと違うのですが、
その人の内面まで含めた特長を非常によく捉えているように感じます。
その中でも特に気に入った人物画はこちらです。
「ポール・ベラール夫人の肖像」
聡明で美しく、優しさを醸し出した雰囲気。
そして理知的な慎ましやかさが感じられます。
また、今回紹介する人物画3点全てにいえますが、
ルノワールは黒の使い方が非常に上手いですね。
とても黒がびしっとキマっています。
「リヒャルト・ワーグナー」
自分はクラシック音楽が好きなので、
作曲家ワーグナーを描いた作品を見つけて、とても嬉しく思いました。
一見穏やかですが、動かし難い意志のようなものを感じます。
が、しかし、老いて人生の黄昏にあるのでしょうか。
肌が異様に白くやや生気に欠けています。
最後まで意志の強さを貫こうとするも、死に近いことが彼を穏やかにさせている。
そんな風に感じさせます。
後で図録を買って知ったのですが、
これはワグナーの死の1年前に描かれた作品だそうで、
そうだとするなら、ワーグナーの内なるものまで描き切っていていたといえるのかもしれません。