【クラシック音楽】ウィーン世紀末のクラシック音楽 アルバン・ベルク「歌劇 ルル(未完)」
今回はシェーンベルクが自作の絵にも描いたアルバン・ベルクの作品について
実際のアルバン・ベルクはこんな人です。
品のいい優男風イケメンですね。
今回は、このイケメンが作曲した、変な音楽についてですが(^_^;)
とっつきにくい彼の作品の中では ヴァイオリン協奏曲はイケます。
ベルク: ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」 クレーメル 1984
キーとかギャーとか、聴いている人を不安にさせるという感じは変わりませんが(笑)
節々で綺麗な美しい調べもあってか、
演奏会でも取り上げられ、CDの数も多いようです。
自分もシェーンベルクよりは断然好みです。
そして、今回の記事では彼の未完の作品となった「ルル」という歌劇を紹介します。
なにしろこれはストーリーからして救いがない。
ヒロインのルルが男を次々破滅させ、
殺人を犯して娼婦に身を落とし、
あげく、客の殺人鬼に殺されてしまう。
というもので、
とりあえずルルのアリア「ルルの歌」を紹介します。
罪を受け入れるわけでもなく、開き直るではなく 淡々と自分の所業を語る様は、
無調の無表情さと相まって、人間への絶望感を増幅させています。
そして、この歌劇で出てくるのは、
同性愛の貴婦人とか、父親だか情夫だかわからない男、女衒やインチキ金融家など
ろくでもない連中ばっかり。
まさに天から降りてくる、か細い蜘蛛の糸ほどの救いもない、
真っ暗闇の中で蠢く人間の姿を描いています。
曲が終わった瞬間、暗闇から解き放たれ、この世はこんなに明るかったのかと太陽の輝きを感じます(^_^;)
ひょっとしたらベルクの意図はそれだったのか(笑)
普通は音楽を聴いて人々は心が解き放たれるのですが、
この作品は音楽が終わることで心が解き放たれる。
音楽に対する究極のアンチテーゼといいますか。
光からさらに明るい光を求めるのではなく、
一旦暗闇に落ちることにより普通の光が輝きを増して見える。
この頃のウィーンの芸術を総称してウィーン世紀末と言われることがあります。
世紀末とは、退廃的な、享楽的な、救いがない、世も末だというニュアンスですが、
クリムトの作品によく使われるのですが、クリムトでそれを感じたことはありません。
しかし、シェーンベルクやアルバン・ベルクの音楽にはそれを感じます。
ただ彼らの音楽は、20世紀末の世紀末という社会の風潮に乗って作られたものとばかりは言えず、
新しい音楽を作ろうという意欲みたいなものを感じます。
それは必ずしも成功して、世の中に広く受け入れられているというわけではないかもしれませんが、
非難する気にはなれません。
新しいことに挑むという事においては、社会に受け入れられないという事はつきものですし、
シェーンベルク、アルバン・ベルクから100年経った
現在の20世紀末から今にかけての新しい世紀末の時代は、
新しく何かに挑もうという大きな潮流は見当たらず、
新しい生命を生み出そうという意欲に乏しい時代なわけですから。
しかしながら、このアルバン・ベルクの「ルル」、
オペラの演出にコミカル風味を加味した場合、
ルルがルパン三世の峰不二子みたいなキャラになって、結構イケます。
毒のある女が毒のある男達を渡り歩く人生模様といいますか。
オペラというのは演出によって印象が結構変わるんです。
そういう意味では、オペラを魅せるのは、演出家の腕の見せどころといえるかもしれません。