【美術】ウィーン・モダン1 ハプスブルクの帝王たち
19世紀末から20世紀初頭にかけてウィーンで活躍したクリムト展に行って間もないのですが、
ほぼ同時期に六本木の国立新美術館で、
ウィーン・モダンと題して、クリムトと同じ時期、ウィーンに花開いたさまざまな絵画や
グラフィック、工芸、ファッション、音楽などについての大規模な美術展があり、
先日行ってきました。
先のクリムト展が、クリムトの芸術作品に特化したものとするならば、
今回のウィーンモダンは、19世紀から20世紀のウィーンの文化風俗を幅広く展示した博覧会といったところでしょうか。
展示は時系列的に並べられており、
まずはウィーンハプスブルグの全盛期を築いた帝王たちの肖像画。
「マリア・テレジアの肖像」
女性の身でありながらプロイセンのフリードリヒ大王、フランスのルイ15世などと一歩も引くことなく、
ウィーンハプスブルク家の全盛期の基礎を築いた女王。
彼女がすごいのは、子供を16人産んでいて、その中にマリーアントワネットもいるのですが、
ほぼ20年間絶え間なく妊娠出産しながら、その政治的偉業を成し遂げたということ。
気品に溢れ、美しいだけでなく堂々としています。
この絵画においてはスカートの柄に目を惹かれました。
本物の金の刺繍かと見まがうばかりの細緻な模様。
青地のスカートに金色が映えて、パッと目を引きます。
「ヨーゼフ2世の肖像」
その息子ヨーゼフ2世の肖像画も、母テレジアにはやや及ばないものの、
穏やかな気品に満ちた堂々たる表情。
銀の鎧がとても美しいですね。
ヨーゼフ2世というと、自分は思い出すのはモーツァルトを保護した皇帝で、
映画「アマデウス」での印象が深いのですが、
実際はこんなお顔をしていらっしゃったのか(^^)
フランツ・ヨーゼフ1世夫妻の肖像
それから数十年時代が下って、四世代を経た 皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の肖像。
穏やかさ、優しさといったものは引き継がれているように思いますが、
やや線の細さを感じざるを得ないところがあります。
このあたりは徳川将軍と同じで、時代が下るにつれ、線が細くなっていく感じです。
初代家康
孫の3代家光
家康から四世代後の7代家継
広い部屋でぽつんと座っている老年のフランツ・ヨーゼフ1世。
部屋は調度品が並べられ華やかですが、何とも言えない寂しい佇まいが感じられます。
皇帝となった後継者の息子は愛人と心中、代わりの後継者となった甥はサラエボで爆弾テロで爆死、
妻エリーザベトは暗殺され、家庭的にも恵まれませんでした。
マリア・テレジアの時代から150年。
時代は王が華やかに覇権を争った時代から、いくつかの市民革命を経て、産業革命が起こり社会は近代化し、
そういう社会が膨張して第1次世界対戦が起こり、
世界が弾けたと同時にハプスブルク家も世界史から退場したという感があり、
その栄枯盛衰に感慨深いものがあります。
死の床に横たわるフランツ・ヨーゼフ1世
その死の2年後にハプスブルク家の帝国は崩壊しました。
次回はこの時代のウィーンの素晴らしい工芸品について書きます。