らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ウィーン世紀末のクラシック音楽 シェーンベルク「月に憑かれたピエロ」

 


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ウィーン・モダン展で見たシェーンベルクの肖像画

 

自分は、シェーンベルクの作品については、

あまり好んで聴くという感じではありません。

 

その作品の印象を一言で言うと、キーとかギャーと響いて人を不安にさせる音楽(笑)

しかしながら、じっくり聴き込むと、よく考えられた良い音楽だと感じることもあります。

しかし、それでも繰り返して聴いて楽しむという感じにはなかなかなれません。

シェーンベルクの作品を長く聴くと疲れてしまうんです。

彼の曲は歌心に乏しい。

シェーンベルクを聴いた後だと、

とっつきにくい無愛想なプロコフィエフが陽気で楽しい人間に見えてくるし、

メンデルスゾーンになると、もうこぶし回しすぎという感じになります。

 

しかしながら、シェーンベルクの音楽の、

これまでの作曲家にはない可能性みたいなものを感じたところがあります。

 

「月に憑かれたピエロ」

ベルギーの詩人の詩をもとに作曲された音楽。

 

夜の 死の病にある月よ
あの空の黒い枕の上に臥せっている
お前の視線が 熱に浮かされて巨大に
私を捉える 不思議なメロディのように

耐え難い恋の苦しみに
お前は死ぬ 憧れに窒息して
夜の 死の病にある月よ
あの空の黒い枕の上に臥せっている

恋する者 心がざわめいて
われを忘れ恋人のもとに忍ぶ者に
喜びを与えるのだ お前の光の戯れは
お前の青ざめた 
夜の 死の病にある月よ

http://www7b.biglobe.ne.jp/~lyricssongs/TEXT/SET3898.htm

 

月というのは、東洋の中国や日本では、

夜空を照らす神々しい光であり、神秘的で美しい存在ですが、

西洋では闇にぽっかりと輝く妖しい光で、魔物を目覚めさせる妖気に満ちているというような感覚で捉えられることがあります。

月の光を浴びて魔獣に変身する狼男などが良い例でしょう。

西洋の人々は、中世において、鬱蒼と広がる黒い森の隅っこで、

ひっそり息をひそめながら生きてきたわけで、

人間にとって森の中を蠢く獣というのは恐怖そのものだったわけです。

それが夜になり、月の光が地上に下りてくると活発に蠢き始める。

それはヘンゼルとグレーテルや赤ずきんちゃんのような童話にも垣間見えます。

 

シェーンベルグの「月に憑かれたピエロ」も、

夜の闇に光る月に対するなんともいえぬ畏れ、恐怖といった遺伝子を受け継いでいるように感じます。

 

曲を聴くと、声があちこちに飛んで、ともすれば、気が違った人間の独言にも聞こえます。

しかしながら、この作品のYouTubeを見ると、バレエや創作ダンス、映像など様々なバリエーションがあって、

ちょっとびっくりします。

自分の好む歌心溢れるクラシック音楽の作品ではあまり見られないことです。

無調音楽と呼ばれるこの作品は、ひょっとしたら歌心が無い分、

抽象的で、聴く人のイマジネーションの余地というものを残しているものなのかもしれない。

これからもこの曲にインスパイアされて、様々な派生的な作品も生み出されるかもしれないという予感がします。

 

 

それは以前、美術展で現代の抽象画家モンドリアンの作品を見たときにも感じたことです。

 


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https://www.xn--mozo-y93c7h.com/entry/2014/12/12/152908

 

モンドリアンの作品を並べていくつも見るのは正直つらいですが、

モンドリアン柄のオートクチュールを作ったクリスチャンディオールやその他の工芸品、


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最近不動産仲介でもこのようなものを見かけました。


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要は作品が広がるイマジネーションがあるのです。

 

それではここで「月に憑かれたピエロ」で面白いなと思ったものをいくつか紹介します。

 


Pierrot Lunaire/Schoenberg/Schafer


感覚的には「月に憑かれたピエロ」のプロモーションビデオのような映像。

舞台を現代の大都市において、その不可思議な世界を余すところなく映像化しています。

 


勅使川原三郎 「月に憑かれたピエロ」


勅使川原三郎さんの創作舞踊。

とても曲にマッチしていると感じます。

この振り付けを創作した人の感性の鋭さを感じさせる舞台です。

ちょっとライブで見てみたかったですね。

 



Schoenberg"Pierrot Lunaire"1/7Miku (シェーンベルク)月に憑かれたピエロ(初音ミク)


ボーカロイド初音ミクによるもの。

生の人間でないボーカロイドの声が意外にこの曲に合うんです。

感情がない歌声は無調の作品に合うのでしょうか。

細かいところでは色々問題があるようですが、

とにもかくにも独特な不可思議な世界を創り出しています。

面白いですね。


この作品、インスパイアされて、まだまだ新しい作品が出てくる予感もします。

現代人の感性を刺激する何かを持っているのかもしれませんね。