らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】同曲異楽器の魅力 リスト ベートーベン交響曲ピアノ編曲版


続きです。

前回紹介しましたヘンデルパッサカリア」のように、
クラシック音楽は、比較的シンプルで、小規模なものだったのですが、
19世紀以降、社会が進むにつれ、
次第に複雑で大規模なものになっていきました。

そうすると、そのような複雑で大規模な作品は、
そのまま、もしくは簡単なアレンジにより
作曲家指定以外の楽器で、演奏することが極めて困難になりました。

それをしようとすると、大掛かりな編曲を施さねばなりませんので、
かなりの編曲能力を要しますし、
演奏上極めて高度なテクニックが必要となったりします。

しかし、それに敢えて挑んだのが、
リストという作曲家です。
彼は、同時に凄腕のピアニストでもあります。





実を言いますと、以前「同曲異演奏の魅力」で紹介した
「ラ・カンパネラ」というピアノ曲も、リストの編曲によるもので、
(参照) http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/10185643.html
オリジナルはパガニーニという作曲家のヴァイオリン協奏曲なんです。
http://www.youtube.com/watch?v=ra-mRawdH3o

いかがでしょうか。
ピアノ編曲版と比べると、
オリジナルは、楽しげで踊り出したくなるようなメロディーにも感じますね。
ピアノ版とはかなりイメージが違います。


その他にリストはドデカい編曲をしています。
ベートーベン交響曲全曲をピアノ版に編曲したのです。

ここでは「運命」で有名な第5番を紹介します。
(ピアノ版)http://www.youtube.com/watch?v=QLFwcX_Mp1k&feature=relmfu
(オリジナル)http://www.youtube.com/watch?v=DbdwPHMLZ7c&feature=related


いかがでしょうか。
もともと何十もの様々な楽器で音楽を創りあげている曲なので、
ピアノ1台だと、どうしても頼りない部分はあります。

ただ、何度となく反芻される運命の動機と呼ばれるメロディについては、
今までのような、重厚で激しいイメージとは別な、
煌めくような、そして繊細で静かな美しさ、
それは、寄せては返すさざ波に、陽の光がきらきら反射しているような、
そんな美しさを感じます。


そして、こちらは第6番「田園」。
(ピアノ版)http://www.youtube.com/watch?v=hncmTxYZ5ss
(オリジナル)http://www.youtube.com/watch?v=B-PGLjqF3f8


オリジナルのオーケストラ版ですと、
まったりとしながらも、
田園の賑やかな活気ある風景を彷彿とするイメージですが、
ピアノ版ですと、静かな美しい田園を、
人知れず、独り、楽しむ…という、
ひそかな歓びのようなものをイメージします。

どちらのピアノ版も、曲のもともとの主題の輪郭が、くっきりと浮き上がる感じで、
かつ、今までのオーケストラ版では感じ得なかった魅力を感じることができ、
自分は非常に愛聴しています。

しかし、一般のクラシックファンには、
この手の編曲ものは、今ひとつ人気がありません。

その理由としては、もともと交響曲として創り上げられた曲を、
ピアノソロに編曲しているわけですから、
やはりパートによっては、音楽が貧弱にならざるを得ませんし、
それを無理にカバーしようとしますと、
時にはアクロバティックな、超絶技巧のようなものに頼らざるを得なくなってしまいます。

ですから、素晴らしい作曲能力をもつ編曲者と、
素晴らしい腕をもつ演奏家が出会って、
初めていい音楽に結実するという部分があることは否めません。

というわけで、なかなかこの手の音楽において、
両方の条件が揃うことは難しく、
いい音楽が少ないのが現状なんです。


が、しかしこの現代に、リストに勝るとも劣らぬ
素晴らしい編曲能力を有し、かつ、凄腕の演奏家という、
両方に傑出した才能を兼ね備えた人物が現れました。
しかもこの日本に。


次回後編は、この人物の紹介と、
クラシック音楽の編曲が、
現在意外なジャンルで盛んに行われていることを書いて、
終わりにしたいと思います。

なお、ベートーベン交響曲第9番「合唱」については、
交響曲の中でも規模が大きいため、
2台のピアノによる連弾となっています。
演奏もなかなか良いものがなかったのですが、
この記事を書いていて、たまたま良い演奏のものを見つけましたので、掲載しておきます。
第4楽章のみです。

静かにささやくような、優しく、美しい歓喜の歌です。