らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ベートーベン ピアノソナタ第23番「熱情」






空海真言密教曼荼羅
究極の調和の世界を表しているとされる




自分が疲れた時にすることは、やはり音楽を聴くことです。

以前、自分が見た、実在の高名な指揮者の伝記映画で、
主人公が指揮者を目指すきっかけとなった言葉。
「指揮者の成す業は神の御業と同じ。混沌を調和に変えること。」
https://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/10237798.html


そうです。優れた音楽とは調和の存在そのもの。
悲しみ、苦しみ、葛藤、愉しみ、慈しみ。
テーマは違えど、優れた音楽であればあるほど調和を極めているものです。

自分が今、好んで聴いているベートーベン ピアノソナタ第23番ヘ短調 作品57。
「熱情(アパショナータ)」という通称を持ち、ベートーヴェンの最高傑作のひとつとして名高い曲です。

この曲、「熱情」の名にふさわしく、
音楽が、激しい水の流れが渦を巻きながら、
怒濤のごとく注ぎ込むような、
ラストの第三楽章はその極みに達し、フィナーレを駆け抜けます。

得てして、熱情の主題に身を任せ過ぎてしまうと、
その激し過ぎる情念にひとつひとつの音符がつぶれ、音楽が濁ってしまう。
中には、そのような勢いに任せて激しさを突き進む演奏が好まれる向きもありますが、
自分的にはその激しさとは刺激であり、調和とは異なるものと感じます。

すなわち刺激とは一過性のものであり、
その勢いが最高潮の時は、夢中で聴く時期があっても、
いずれは飽きて離れて行ってしまうもの。

これに対し、調和というのは、常にエネルギーを宿し続け、発し続けるものです。


この曲で自分が最も好んで聴いているのは、
往年の名ピアニスト ホロヴィッツの演奏。




カミソリのようなするどい切れ味と迫力。
しかし、どんなに激しくても、音がクリアではっきりしており、
勢いに任せているのではない、調和の極み。


そしてもう一つの演奏。
辻井伸行さんのピアノも音の粒が際立って、
とてもクリアで濁っておらず大変素晴らしい。



盲目でこれだけのものを弾くというだけでも驚嘆すべきことですが、
盲目ということを取っ払っても、
彼の音楽は決して無意味に響くことない、非常に素晴らしいピアニストです。




疲れている時というのは、心が混沌として濁っている状態です。
そういう時に、調和に満ちた演奏に身をひたすと、
その調和に心がシンクロして、心の濁りが希釈されていくといいますか、
上手く言えませんが、そんな感じがします。

そのような、混沌を調和に変えるものを持っているということは、
とてもラッキーで素晴らしいことなのかもしれません。


今回挙げた演奏はクラシック音楽に興味のない人でも
それに目覚めるきっかけになるかもしれない素晴らしい演奏です。
ぜひ聴いてみてください。