らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「名刺」山村暮鳥











おとづれてきたのは

風か

るすのまに

木の葉の名刺が置いてある

ここらにはみかけない

秦皮(とねりこ)のはつぱだ






自分が夜、仕事から帰宅しますと、
ふと玄関の端に落葉した葉っぱを1枚見つけました。
おそらく自分が玄関に入った時に風と一緒に入ってきたものか、
服に乗っかって、玄関で落ちたものなのでしょう。

それを見て、この詩の事を思い出しました。

名刺とは、その人が何者であるかを知らせ示すものですが、
この玄関に紛れ込んできた紅葉の葉っぱも、
その色づきや枯れ具合で、
秋が過ぎ、冬の訪れを知らせ示してくれるものに違いありません。

この詩の、目に見えぬものがそっと肩を撫でてくれるような、
おだやかな優しさがとても好きです。
また、葉っぱを風の名刺と例える発想もとてもユーモラス。



なお、秦皮(とりねこ)とは日本に広く自生する植物で、
昔は、田んぼの畦に植えて、稲を干す稲架木として利用されていたものだそうです。