らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】ルノワール展 1














ちょっと変なことを言うかもしれませんが、
自分は楽しみにしていた美術展に行く時、妙に緊張してしまうことがあります。
時には目的地が近づくにつれ、胸がドキドキしてくることも。

それは、まるで、ずっと会いたかった人と初めて待ち合わせをするような、
自分にとって芸術作品を見に行くというのは、
憧れの人に初めて会いに行くのと同じ感覚なのかもしれません。



今回は、乃木坂にある国立新美術館で開催されているルノワール展。
ルノワールのそうそうたる作品が集まり、
所蔵のフランスの美術館は、
空になってしまっているのではないかと思ってしまうほどの規模のものゆえ、
絶対に行きたいと思っていましたが、
先日お盆の休日にやっと行って参りました。



冒頭の対照的な二つの人物画。





「猫と少年」

艶かしい。でも愛らしい。
大人のような、子供のような、その境を行き来する少年。
エロティックと可愛らしさを行き来しているともいえます。
暗い部屋で、物憂げに、白い肌で振り返るその様は、
誤解をおそれずにいえば、今回のどの裸婦像よりも官能的で陰美ですらあります。

逆にルノワールの裸婦像というのは、そんなにいやらしくないんです。
今回、実物を見てさらにその感を強くしましたが、
ルノワールの裸婦というのはあくまでも陽なんです。
陰の官能的、エロティックなイメージではなく、
陽の健康的、エネルギー、そのようなものをより大きく感じます。

その中で、この少年の絵は非常に特異に感じました。






「陽光のなかの裸婦」

先ほどの少年の暗い部屋から、いきなりぱっと光の中から現れた彼女。
彼女は、木漏れ日の光の中に立っていました。
その光は、時には明るすぎて、その輪郭がぼんやりとしてしまうほどでしたが、
はっきりしないその様は、夢の中でその人を見ているようでもあり、
その中で彼女の微笑みがうっすらと確かに見えました。

彼女の肌に木洩れ日の光がキラキラと幾重にも反射して、
彼女の肢体が何よりも美しく浮かび上がっていました。


この作品については以前このような記事も書いています。
http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/13818624.html



さて、ルノワールといいますと、
裸婦像などの人物画が一番に挙げられますが、
今回初めて彼の風景画を観て、思わずビビビときました。





「イギリス種の梨の木」






「シャンロゼーのセーヌ川






セーヌ川のはしけ」

一見、人もまばらな静かな自然の風景にすぎませんが、
それは単なる自然を写生したものではありません。
見ていると、緑の力強さが迫ってくる観があります。
緑が風にざわめき、川が滔々と流れ、雲が空を悠然と流れてゆく。

今まさに生きている自然を感じます。
風に乗った緑の濃い匂い、川の水の匂いを感じさせる力強さがあります。
どう描いたら、こんな風に感じることができるのか、
ちょっと不思議な感覚でした。