らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】五姓田義松作品選 神奈川県立歴史博物館





http://ch.kanagawa-museum.jp/tenji/toku/yoshimatsu/fig/column_20150818a.jpg



皆さんは五姓田義松(ごせだよしまつ)という洋画家をご存知でしょうか。

1855年まさに幕末が始まろうとする江戸に絵師の次男として生まれ、
1866年開国直後の横浜で、英国人画家ワーグマンより西洋の絵画技術を学ぶ。
この時わずか10歳。

そして、入門後、2年にして描いた自画像の油絵。






高杉晋作坂本龍馬など幕末の志士が闊歩していたとほぼ同時期に、
これだけの油絵を描ける少年が日本にいたとは本当に驚くべきことです。
彼の並々ならぬ画力がおわかりになるかと思います。

そして維新が成り、明治13年芸術の都フランスに留学。
翌年、日本人で初めて芸術アカデミーの展覧会「サロン・ド・パリ」に26歳で入選。






その時の作品がこちらですが、
本場の西洋画の作品に混じっても全く遜色ない力量を感じます。

そして帰国後、明治美術会の結成に参加するなどして、
日本洋画界の振興に尽くしました。






若き頃の義松の自画像。
18歳頃のもの。

印象的なのは、絵を見る者を真っ直ぐにみつめる被写体のその瞳。
彼の作品は、実にその表情が新鮮なんです。
まるで絵の対象が間近に本当に存在しているかのような写実感といいますか、
そのようなものを感じざるをえません。
そして、彼の作品の中の人物は決して古くならないのです。
まるで現代の人が描いたと見紛(みまご)うような新鮮さに溢れています。

五姓田義松の作品は、風景画と人物画、両方優れているとは思いますが、
自分は断然人物画の方に惹かれます。



そして、こちらが彼の代表作とされるもの。




臨終の母を描いた作品。
これを描いた翌日に彼の母は亡くなりました。


確かに後世の洋画家たちの作品に比べると、
衣服のしわの書き込みなど、少々作品の荒さは目立ちます。 
しかしながら、死に逝く母の顔の起伏や肌の色のひとつひとつが極めて細かく描かれており、
半開きで空を見つめている瞳、
必死に死と闘っている母の最後の生の姿が、
そこにはしっかりと描かれています。

中には緻密に写実的に過ぎ、作者の感情が伝わってこないという向きもありますが、
自分には、母の最後の生をあまさずに表現しようとする画家の姿がみえます。
写実とは対象から発せられるそのエネルギーを全身全霊で観察することにより引き出すものです。
ただ正確に精密に写すのとは違うのだと自分は思っています。

この死に逝く母の絵には、
その内面がまさに表現されているように感じます。



そして、最後に是非見ていただきたい作品。
作者自身の様々な表情を鉛筆で描いた作品「六面相」。






まるで現代の若者たちが、授業でわいわいやりながらクロッキーしたような、
その様々な表情を無邪気に嬉々として楽しみながら、
おっ、俺ってこんな表情しているのかという発見の連続のような作品。
見ているだけで楽しい気持ちになってきます。

多彩な顔の表情。
これこそが彼の新しい絵画の最も魅力的なところなのだと感じます。
ひとつひとつ異なる自我の個性。
江戸時代の浮世絵のような限られた表情から解き放たれたような様々な表情。
まさにその人がすぐ目の前にいて、
その息遣いが聞こえてくるような生き生きとしたもの。
これこそ日本の新しい絵画の夜明けだったのではないか。

そして、それを描いた五姓田義松こそは、まさにその先駆けを行った人であった。
自分はそう思います。



なお、神奈川県立歴史博物館が五姓田義松について製作した映像がありますので、
さらに彼のことを詳しく知りたい方は、こちらを御覧になってみてください。