らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】絵画の潮流展









今回は、ちょっと前に行った美術展のお話です。
行ったのは、横浜そごう美術館「絵画の潮流展」。





http://www.shimakawa-museum.jp/


仙台で多角的な事業を営む島川隆哉氏が、
20年余をかけて日本画、洋画など数多くの美術品を収集し、
蔵王連峰を一望の下に見渡せる自然豊かな山野に建設した
エール蔵王 島川記念館に収蔵された作品の数々。

その作品は、とてもバリエーションに富んでいて、
特に、自分が見に行った時季は桜の季節であったことから、
こちらの前田青邨「春暖」なども見ごたえのある、なかなか華やかで美しい作品だったのですが、








今回は、その中から特に印象に残ったものを紹介します。






加山又造「猫」


猫の毛って細いんです。そして、みっちりと生えていながら、
それでいて、ふわふわして、すべすべしていて、ベタっとしていない。
夏はひんやり冷たくて、冬は温かいんです。

そんな猫の毛の感触をこの作品は見事に表しています。
至近で見ると、細い筆で一本ずつ丹念に猫の毛が描かれています。

今までの猫というものを飼った事がない時分であれば、
素通りしてしまった作品であったかもしれません。
でも、毎日、自分もランスと接することで、
或いは、作者の作品の猫に対する、
愛情の襞(ひだ)に触れることができたといえるかもしれません。





森本草介作品




「布を纏う裸婦」



「窓辺」



ぱっと見ると、一瞬写真かと見まがうばかりの肌の質感、髪の毛の細密な描写。
そのあまりもの精緻さに驚くばかりです。
さらに近づいて、至近で作品を確かめると、
粗が見えるどころか、本物の人間がはめこまれているような不思議な錯覚すら生じます。
こんなタッチを描く画家がいたとは知らず、本当に驚きでした。

この彼の作風について、究極の写実と評する人もいます。

それでは、果たして、これは写実を極めた作品といえるでしょうか。

必ずしもそうではない。と感じます。
なぜかというと、彼の描く人物は、

人間そっくりに造られた人形にしか自分には見えないのです。


確かに精巧に人間の形を復元したかのように、
パーツのひとつひとつは本物そっくりの質感といえます。
しかしながら、呼吸というか、息遣いというか、
時には均等でない心臓の鼓動、そのような人間の生(せい)というものが、
見ている者に迫って来ないのです。






同じく展示されていた安井曾太郎「立像」。

こちらの方がまだ実際に生きている女性の肉感というか、存在感を感じさせます。

これは不思議な体験であります。

写実とはよく言ったもので、写実とは写形に非ず。
それでは、写実における「実」とは何なのか。

一般に写形の極致であるはずの写真の方が、写実をしていると感ずることすらあります。








森本作品は、自分にとって、写実とは何かを考えさせる作品といえます。
それを答えるには難しい問題ですが、
少なくとも対象をじっと観察して、形を写し取ることの+αが含まれていることは確かです。


写実については、自分の中ではなんとなくイメージがあるのですが、
それをいまひとつ言葉で上手く表現できない部分もあり、
これから書いていく美術の記事において、随時、具象化していきたいと思っています。