らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】ヴァラドンとエリック・サティ

 
 
 
 
 
先だって書きました、
ヴァラドンユトリロの母子シリーズのおまけ記事です。

今回、ユトリロの母ヴァラドンの人生を追ってゆく過程で、
彼女の恋人の一人に、音楽家エリック・サティの名前が挙がっており、
ヴァラドンの、その交流関係の広さに、ちょっとびっくりしました。

ちなみに、エリック・サティとは、こんな曲を作曲した人です。
https://www.youtube.com/watch?v=0peXnOnDgQ8
 
彼の名を知らなくとも、このジムノぺディのメロディは、
大概の方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。


ヴァラドンとサティは、つきあっていた当時、お互い20代後半くらい。

当時の二人はこんな感じです。





 
 
二人はお互い熱烈に愛し合い、
サティは彼女にラブレターを300通くらい書いたそうです 。

が、しかし、二人の関係は半年で終わりました。


では、実際の二人の関係とはどのようなものだったのでしょう。
実はサティとヴァラドンが、お互いを絵で描き合ったものが残っているんです。

まずはサティの絵から。

http://www.artimpression.co.jp/img-exhibition/img31/varadon.gif

この絵を見て思ったんですが、

音楽的才能と絵画的才能というのは、全く別物なんだなと(^_^;)

これ、彼女に見せたら怒られるレベルですよ。
確かに、似せて描こうとしている努力は認めます。
髪型の真ん中分けといい、髪のハネ具合といい、なんとなくそうかなと思います。
しかし、全体的に単調で雑なことは否めません(笑)
あれほど、繊細でうっとりするような曲を書ける人が、
絵になると、こんなに雑になるとは(^_^;)
評価できる点は、五線譜に描いているところがオシャレかなと。

 
それに対して、ヴァラドンがサティを描いた絵がこちら。 




 
さすがです。
さすがとしか言いようがありません。
絵画だけ見ると、必ずしも写実的とはいえませんが、
とても正確に特長を捉えている感じがします。
例えて言うなら、写真のように正確な写実性をもって対象の骨格を作り、
その上に、デフォルメした、対象の個性を、
ふんだんに塗り込めていったと言いますか。
二人の作品を見比べると、ヴァラドンの絵の才能の素晴らしさが凄くよく分かります。

 
ちなみに、こちらはサティが自分自身を描いた作品です。
ちょっと年を取ってからのものですけれども。




ヴァラドンを描いた作品より、
さすがに自分の顔だけあって、 細かい特徴を捉えているといえますが、
全体的に貧相な感じがします(^_^;)

 
このように、お互いを描いた絵などをみますと、
割り切った大人同士のクールなアバンチュールというよりは、
それなりにお互い、楽しい恋愛関係だったのではないかと感じさせます。

巷では、ヴァラドンにとってサティは大勢の男の中の一人に過ぎないが、
サティとってヴァラドンはたったひとりの女性だった。などと揶揄されたりしますが、
(その後、ヴァラドンは二度結婚したが、サティは生涯独身だった)
男女の仲は、得てして藪の中といいますか、
ちょっとわかりませんね。
でも、このようなものを見ていると、
それぞれまんざらでもなかったような気もします。


それでは、
楽家であるサティがヴァラドンのために作った曲はないのでしょうか。

残念ながら、直接、ヴァラドンの名前を付した作品は無いんです。
しかし、二人が別れてから数年後、
サティは恋をテーマにした、ひとつの曲を作曲しています。

題して「Je te veux 」

邦訳では、「あなたが欲しい」「あなたが大好き」などと題されますが、
サティの代表的な作品のひとつとなっています。
情熱的な内容でありながら、どこか哀愁を感じさせる、
切ない、そして懐かしみを帯びたメロディ。

もしかして、サティはヴァラドンのことを想い描いて、
この曲を作曲したのかもしれませんね。
 
ぜひ聴いてみてください。