らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【映画】長州ファイブ







「長州ファイブ」
2006年 日本

出演者 :松田龍平山下徹大北村有起哉、三浦アキフミ、前田倫良
監督 : 五十嵐匠



幕末長州の志士といいますと、
桂小五郎高杉晋作久坂玄瑞といった、
有名な人の名ばかりが挙がりますが、
志士とは、決して、そのような人だけではありません。
分野においても政治的分野だけでなく、
実は、他の様々な分野でも、志をもって命をかけた若者達がいたのです。

この映画は実話に基づいて、
そのような一般に知られていない志士たちの日々を綴った物語です。


冒頭、攘夷に叫び、イギリス公使館を焼き討ちする長州の若者たち。
この映画、最初の入りの部分のテンポがやや悪く、
そのほか高杉晋作がオッサンすぎるとか、佐久間象山役に泉谷しげるはないだろうとか、
細かい不満は多々ありますが(^_^;)
攘夷、即ち敵を打ち払うには敵を知らねばならない。
ということで五人の若者が選抜され、英国留学(実は密航)を 命ぜられるところから、
俄然ストーリーに引きつけられるものとなっています。

選ばれた若者の名は、
伊藤俊輔伊藤博文)、井上聞多井上馨)、遠藤謹助、山尾庸三、野村弥吉(井上勝)

伊藤博文井上馨大河ドラマにも登場するような、歴史的にも有名な人物ですが、
あとの三人はご存知ないのではないでしょうか。

この映画は、その三人のうち、
松田龍平演じる山尾庸介を中心にストーリーが展開してゆきます。

吉田松陰高杉晋作らが望んで 果たし得なかった欧州渡航ですが、
その決意の強さは二人の大先輩に、おさおさ劣るものではありません。

黒船来航から10年を経たずしての英国渡航
それ以前の世界観では、日本しか存在していなかったわけですから、
ある意味、我々が宇宙人と遭遇してから10年経たずして、
その星に留学に行くような感じだったのかもしれません。

大英帝国のロンドンについてからの、
彼らの驚きぶりは、想像に余るところがあります。
しかしながら、彼ら五人の、見るもの、聞くもの、触れるもの
全てを吸収しようという貪欲さには頭が下がる思いであり、
その真摯に物事を学び取ろうという実直な態度は、
当時の最も先進国であった英国人をして感服せしめます。
長州ファイブとは、英国人が敬意を込めて、彼ら五人を呼んだ言葉だったのです。

半年後、伊藤、井上の二人は、欧米連合艦隊の長州攻撃の新聞記事を読んで、
それを阻止すべく急いで帰国しますが、
残る三人は、英国に残り、引き続き、勉学に励み、技術を修得しようと努めます。

ある者は造船の技術を、ある者は鉄道の技術、そしてある者は造幣の技術を、
夜を徹して学び取ろうと勤しみますが、
その中で、松田龍平演じる山尾庸介は、
或る日、ひょんなことで聾唖の少女と出会い、手話というものを初めて知ります。

そして、一流の英国人技術者達に「ミスター」と敬意を表されるまでに,
学問技術を修得して、
彼らが帰国したのは幕末明治が始まる直前のことでした。


それでは、この若くして英国に渡った長州ファイブの若者たちは、
その後、どのような生き方をしたのでしょうか。

伊藤博文井上馨については 皆さんもご存じかも知れませんが、
あとの三人も、この伊藤、井上に決して劣ることのない、
明治の日本を照らす輝く星となって、
近代化の世を築いたとだけ言っておきましょう。

実は、映画の最後に、それぞれがその後、どのような人生を送ったか
詳細な説明が流れるのですが、
彼らの映画のストーリーを見てから、最後にそれを見ると、
思わず拍手したくなるような気持ちに駆られます。

攘夷と言いますと、得てして、
西洋人を殺したり、その建物を破壊したり、彼らとの戦争に勝つという、
暴力的破壊的な考え方が思い浮かぶところですが、
この映画での攘夷、つまり夷を打ち払うとは、
夷に心を支配されることなく、言いなりになることなく、
自らが生まれ出たものに誇りをもちつつ、
夷を貪欲に学び、自らを磨くことにより、彼らと対等に向き合う。

このように捉えられているように感じました。

とするならば、平成の世に生きる自分も立派な攘夷論者ということになります(笑)

この作品、細かい史実や映画の構成などを気になる向きもありますが、
(実は聾唖の少女とのふれあいは、自分も少し冗長に感じた)
彼らの物事に飛び込んでゆく勇気、貪欲さ、
自分の国を立派に近代化しようとする使命感、
というようなものを大きく感じていただければと思います。


なお この映画はyahooトップページに掲載されているgyaoの無料映画で鑑賞しました。
25日まで無料で見られるそうですので、
興味のある方は是非ご覧になってみてください。
(予告編)https://www.youtube.com/watch?v=CgVxhaHUwGk
(本編)http://gyao.yahoo.co.jp/p/00620/v07097/







本物の長州ファイブの写真
左後:遠藤謹助 右後:伊藤博文             
中央:井上勝
左前:井上馨 右前:山尾庸三