「きりん」まどみちお
きりん
きりん
だれがつけたの?
すずがなるような
ほしがふるような
日曜の朝があけたような名まえを
ふるさとの草原をかけたとき
一気に100キロかけたとき
一ぞくみんなでかけたとき
くびのたてがみが鳴ったの?
もえる風になりひびいたの?
きりん
きりん
きりりりん
昨年104才でなくなられた詩人まど みちおさん、
ぞうさんなどの童謡で、広く知られていますが、
きりんについても、こんな素敵な作品を作っていらっしゃいました。
まず、驚くのが、まどさんの言葉に対する感性。
きりんというたった3文字の言葉から、美しく、愛らしく、
草原の風がやさしく駆け抜けるような爽やかな感性が溢れ出ています。
そして、それは、同時に、言葉というものを口ずさむ素晴らしさを教えてくれます。
言葉って本当に不思議なものだと思います。
それぞれの名前にそれぞれのリズムがあります。歌があります 。
動物だけでなく、植物、自然界のすべて。
そして、もちろん人間においても、
その名前にはそれぞれ一つ一つにリズムがあり、音楽があります。
そして、それはそのものに対して、
本当に唯一と言っていいほどのぴったりとした個性の輝きをもったものです。
この四季折々の風土に生まれ育った自分としては、
きりんはきりん以外の名前を想像できませんし、
さくらはさくらとしてしかそのものを想像できません。
そして、アジサイはアジサイの花の名以外で想像することができません。
空は空としか思い浮かびませんし、
海は海以外の名を想像できません。
モノの魂が名前に宿るのか、名前の魂がモノに宿るのか、
もしくはその両方が合わさるのか、自分にはそれはわかりません。
しかし、ご自身においても、そのお名前を一度口ずさんでみると、
それまで気づかなかった、その名前のリズムの中に込められた、
優しさや、勇ましさ、なだらかさや、力強さ。
今まで隠れて見えなかった、その魅力に気付くことがあるかもしれません。
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