らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【テレビ番組】大河ドラマ 花燃ゆ7

 

第19話「女たち、手を組む」
第20話「松下村塾、復活」
第21話「決行の日」
第22話「妻と奇兵隊



松陰死後、いよいよ久坂玄瑞高杉晋作をはじめとする塾生達が、
歴史の表舞台に出ようとする観のある展開となっていますが、
この大河ドラマ「花燃ゆ」、
どうも世間の評判はかんばしくないようです。

その理由の一つとして、
このドラマは、吉田松陰の妹である文(ふみ)を主人公としたものですが、
彼女自身歴史上特に何をしたという人物でないため、
歴史ドラマとしては創作しにくいこと。
中には、文の人生というのは、旦那には浮気され、自分は子を産まず、愛人は産み、
姉の旦那の後妻となって、姉が産んだ子供を育てる人生。
ある意味、踏んだり蹴ったりで、
現代女性から見て、果たして共感を覚える部分があるのだろうか?
という方もいます。

このような女主人公文のパートにこだわるならば、
もっと幕末の有名な出来事を細かくやって欲しい。
このような意見は自分のまわりで大勢を占めています。

いちいち、おっしゃることはもっともなんですが、
自分は少し違う意見を持っています。

すなわち、歴史とは何か。ということについては、
いわゆる教科書で習うような歴史は、大きな氷山の水面に出た
ごく一部にしか過ぎないと申し上げたことがあります。
http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/14003778.html

歴史に名前が載っている人の事績というものは、
必ず無名の多くの人々に支えられているものであり、
その表には見えていない隠れた部分を想像したり、推測するのが、
歴史小説や歴史ドラマの醍醐味といってもよいでしょう。

それは女性についても同じであり、
あの時代に生きた女性たちは、主人公の文に限らず、
いわゆる一般的な歴史では、何をやってきたかという記述はほぼ皆無ですが、
記述がないから、何もしなかったというわけではなく、
何かを考え、何かをしてきたことは確かなのです。

では、一体、何を考え、何を為してきたのか。
そこはイマジネーションとインスピレーションを働かせて、
ドラマを制作する人々の腕の見せどころだと思うのですが、
無理矢理、歴史の表舞台に登場させたり、荒唐無稽なフィクションを作り出したりせずとも、
いくらでも書けるはずなんです。

いみじくも、吉田松陰はその遺書である留魂録で述べました。
精一杯生き抜いた人間の人生というものは、
それぞれに四季があり、実りがある。
とするならば、20歳でこの世を去った者が、100歳まで生きた者に劣るということはないのである。と。

それは、寿命だけの話ではないと自分は思っています。
あの時代、女に生まれるということは、やはり、ある種のハンディで、
できることは極めて限られていたのかもしれません。
しかし、吉田松陰の言葉を借りるならば、
男には男、女には女、
それぞれもって生まれた人生を精一杯生きた者には、
やはりそれぞれ四季があり、実りがある。
とするならば、女で生まれた者が、男に生まれた者に劣るということはないはずである。
ということがいえるのではないか。
このドラマの脚本家は、そのような観点から、
吉田松陰の妹文の人生を描こうとしている意図が、
そのセリフなどから、節々に見受けられるように感じます。

いわゆる、表舞台の長州の歴史などというものは、
他の小説やドラマでいくらでも見ることができます。
しかし、長州の女性達が、
幕末に、何を考え、どう生き抜いたかということについて、
今まで取り上げられることも少なく、
これは、他では見ることがなかなかできません。

戦争で銃を打ったり、城を奪うことだけが歴史ではありません。
その時代の人々が何を考え、何を思ったかということに思いを巡らすことも、
歴史の立派な一部なのです。

前回、いみじくも、攘夷戦の沿岸防備のため、
長州の女性たちが大勢工事に携わった女台場のエピソードが紹介されていました。

そこで、作業している女性により歌われた「男なら」は、
工事に携わった、長州藩士や奇兵隊をはじめとする諸隊士の妻や子供たちによって、
当時、実際に謡われ、今もなお、伝えられているものです。

前回、誰ともなく、その節を歌い出し、それが作業する女性に広がってゆく様は、
長州の女達の優しさと心意気が感じられる
このドラマの中でも素晴らしい名場面であったと思います。
文役の井上真央さん、彼女、なかなかいい歌声をしていましたね(^_^)

見逃された方は、今週土曜の再放送をご覧になってみてください。



「男なら」 長州民謡


男ならお槍担いで
お中間となって
付いて行きたや下関
国の大事と聞くからは
女ながらも武士の妻
まさかの時には締め襷
神功皇后の雄々しき姿が
鑑じゃないかな

オーシャリシャリ
(おっしゃるとおり そのとおり)








今も萩に残る女台場土塁