らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】「赤、青、黄のあるコンポジション」モンドリアン

 

 

 
ルネサンス以降、中世の形式から解放された絵画は、
画家達の自由な感性により、対象は思い思いにデフォルメされ、
ついに20世紀に入り、デフォルメの究極たる抽象絵画にまで辿り着いた感があります。

赤と青と黄の三色が水平と垂直の黒のラインに囲まれた作品。

ぱっと見ると、コンピューターグラフィックで作成した作品かなとも思ってしまいますが、
ごく間近で見てみると、まぎれもなく画家の肉筆による絵画です。

一見何の絵であるか、ちょっとわかりません。
「抽象」画という以上は、
もともと何か具体的な対象を抽象化したはずではないかとも思うのですが、
全く検討がつきません。


実はモンドリアンについて、
以前、「ブロードウェイブキウギ」という作品の記事を書いたことがあります。

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こちらの作品はまだわかるんです。
真上から見た活気溢れるマンハッタンの様子。
夜にもかかわらず賑やかに車が、色とりどりのヘッドライトをつけながら行き交い、
道路に光のラインを形造る。
それが見事に浮かび上がってくる作品です。






しかし、今回の「赤、青、黄のコンポジション」は難解です。

そんな時、或るところで、
モンドリアンの作品をデザインしたタンブラーを目にしました。




とても美しい絶妙な色彩とラインのバランス。
もしかしたらモンドリアンは、
絵画における色彩とラインの調和を究極につきつめて、
この作品を制作したのかもしれない…
これを見た時、ふと、そんなことを感じました。

この他にも彼の作品はファッションのデザインなどにも応用されているようで、





いわば自分が展覧会で見た、絵画としての平面のそれは、
いわゆる型紙みたいなもので、
その形をどこに写し取っても、
その調和を損なうことなく存在し続けるしなやかさみたいなものを、
この作品は持っているように感じます。

実は今回購入したチューリッヒ美術館展の図録の表紙絵。





モネやゴッホの作品のバージョンのものもありましたが、
自分は迷わずモンドリアンの「赤、青、黄のコンポジション」を選びました。

モネやゴッホは確かに名作ですが、
このような本に装丁すると輝きを失ってしまうといいますか、歪みが生じてしまうといいますか、
その価値を損ねて十分に作品の良さが顕れていないように感じられたのです。

しかしモンドリアンの作品はそうではない。

どこにその形を写し取ろうと
輝きを失わない美しさと強靭さがあるのです。
その強靭さとは、普遍性といってもよいのかもしれません。


抽象画というのは、良きにつけ悪きにつけ、
思索的で哲学的なところがあります。
一見して理解しにくく、これは一体何なんだろうかと思いますが、
ひょんな拍子にその意図するものを感じ取ることができた時、
その面白さの虜になってしまうものなのかもしれません。

今回、モンドリアンの作品に接して、
そんな面白さをちょっとだけ感じることができたような…
そんな気持ちになることができました。