らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【美術】トーベ・ヤンソン展~ムーミンと生きる~

 
 
 



 
ムーミンの原作者として知られるトーベ・ヤンソンは、
子供の頃から絵画に親しん育ち、
母国フィンランドでは、ムーミンの作者というよりは、
画家、芸術家として一目置かれている存在のようです。

少女時代から20代の若い頃の油絵などを見ると、
幼い頃から様々な画家の作品を見て、それを真似し、
自分のものにしていたと感じられます。
父は彫刻家、母は挿絵画家の芸術一家であったそうで、
そういうものには、ふんだんに恵まれていたのかもしれませんね。

実際絵を見ると、確かにその画才は並みの才能ではないと感じます。
絵の中にすうっと入ってゆける心地よさがあります。




絵の具を厚塗りする自画像のものは、
どことなくゴーギャンのようなゴッホのようなタッチを思わせるものがあります。
その他いろいろな画法にチャレンジしていて、
成功しているものも、上手くいっていないものもありますが、
どのタッチのものであっても、
いずれも自画像の作品が最も成功しているように感じます。




風景画、静物画は、正直どんな絵だったか思い出せないところがありますが、
自画像のそれは、いつまでも心に残る印象の強さがあるんです。

自画像を描いている彼女は、
あたかも鏡で自分の姿を見て確認するように、
自画像を描くことで、自分の内なるものと向き合い、
その姿を確認している。
そのように強く感じます。


そして、いよいよムーミンが生み出されます。
彼女が30歳前後の頃のことです。

http://www.rurubu.com/overseas/special/finland/img/moomin/about_tj_img01.gif

ムーミンのそれぞれのキャラにはモデルがいて、
ムーミンパパとママは自分の両親、
スナフキンムーミンの執筆を勧めた男性だったそうです。

なにかそのキャラの描き方、セリフのひとつひとつから
彼女の両親への思い、ムーミンにいざなった男性に対する思いが、
ほのかに垣間見えるような気がしますね。

彼女によるムーミンのイラスト、
非常にたくさんありましたけれども、
色を塗ったものよりも、黒のペン画のものの方が断然よいと感じます。
そして、それは、先に挙げた、自画像の絵画などよりも優れていると自分は思います。
その黒いインクのラインに不思議な強い個性と味があるんです。
そして、なによりも描いている彼女の優しい眼差しを感じます。
 

色を塗るとその味のある個性的なラインが消えて、
色は綺麗ではあるんですけれど、
何やら薄らぼやけてしまうんです。

その他にも、不思議の国のアリスホビットの物語の挿し絵などあり、
とても興味深いものでしたが、
特に「ホビットの物語」の挿し絵は素晴らしい(映画「ザ・ロード・オブ・リング」の原作)。
ムーミンに勝るとも劣らない魅力を感じます。

ぜひこの作品、多くの人に知っていただきたく思います。




 

戦争に対する逃避などからムーミンを描いたなどといわれる
トーベ・ヤンソンですが、
彼女の純粋な、自然を愛でる心が、
美しく可愛らしく結実したものがムーミンの世界のように感じました。



なお、この展覧会はこれから
北海道、新潟、北九州、大阪と巡回する予定とのこと。
http://www.asahi.com/event/tove100/
また、これと並行して別個に「MOOMIN!ムーミン展」というのも開催されており、
こちらも各地を巡回予定のようです。
http://www.fashion-press.net/news/9810
とにかくムーミンを見たいという方は
こちらの方がよいのかもしれません(自分は未見)。
自分が行った方は原作者トーベ・ヤンソンの軌跡であり、
ムーミンはその中の一部なわけです。
まあ同時並行で開催されており、作品は重複していませんから、
行けるのであれば両方行くというのもいいかもしれませんね。