らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【絵画】「オフィーリア」ジョン・エヴァレット・ミレー

 
 

夏真っ盛りですね(-.-;)
本当に真の底から暑いですね(^_^;)

今日は小難しいことをいうのをやめて、
暑を払い、涼を誘うような絵画の記事を書きたいと思います。
それはこちらの作品です。

http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/26/0000013926/84/imgee539a348vccow.jpeg

「オフィーリア」ジョン・エヴァレット・ミレー
 

自分がこの作品と出会ったのは、
中学生の時の美術の教科書であったと思います。
行ったことある方はおわかりだと思いますが、
自分の実家名古屋の夏というのは、とてつもなく暑いんです。
形容するならば、道路のアスファルトが溶けるような暑さといいますか。

自分が名古屋で中学生をやっていた頃は
まあ昔のことですから、教室にエアコン、扇風機の類はなく、
うだるような教室で授業が行われていました。

そのような暑さの中で、ふと教科書で見かけたこの「オフィーリア」。

作品の背景など全く知りませんから、
教室で暑さにうだっていた自分は、
あー、この女の人、顔だけ水の上に出して、すごく涼しそうだなあ~と、
うらやましく絵を眺めたりしたものでした。

緑豊かな日陰の水の中でいかにも涼しげな恍惚とした表情の女性の絵。

プールの授業の時間に、それを真似したりしますと、
顔にじりじりと照りつける太陽の暑さと水中の体の冷たさが実に心地よいバランスで、
名古屋のアホな少年は、オフィーリアのポーズで、
いつまでもプールに浮かびつづけるのでした。


自分が、この絵の背景を知ったのは高校生の時でした。

シェークスピアハムレット」の悲劇の美少女オフィーリア。
絶望のあまり狂気となり、水辺にはまり、流され沈んでゆく少女。
その時に口ずさむつぶやきにも似た歌。

「もすそは大きく広がってしばらくは人魚のように川面に浮かびながら 
  古い歌をきれぎれに口ずさんでいました」

作品の細かいところをきちんと見てみますと、
少女の表情は、確かに悲しみのあまり放心して、自己の意志を失い、
ただただ水の流れに身を任せ、あてどなく漂い、沈んでゆく。
という様に確かに感じ取れます。


しかし、それでも依然、自分としては、
このオフィーリアは絶望で水に沈んでゆくというよりは、
気持ちよさげに顔だけ出して、
水に浮かんでいるように感じてしまうのです。
ただ、なぜ自分が、そのような涼を感じてしまうのか
解明されることはありませんでした。

ところで、大人になりますと、
プールというものにあまり行かなくなりますので、
オフィーリアのポーズで水に浮かぶことはあまりなくなります。
海には何度か行きましたが、
海は、あのポーズでは浮かびにくいんですよ。
どうしても顔に波をかぶってしまうんで(^_^;)

そんなこんなで海にも行かなくなり、
オフィーリアからもすっかり縁遠くなり、かれこれ10年。
涼しげなオフィーリアの謎は、ある日、いきなり氷解しました。

ブロ友さんで、シェークスピアハムレット」の記事を書いてくれた方がいて、
この絵の作者は、「オフィーリア」を描くにあたり、
女性のモデルをバスタブに浮かばせて、
水に沈み具合を正確に描きながら、作品を完成させたのだと教えてくださったのです。

それを聞いた時、自分はビビビときました。

あー、そうか。作者はオフィーリアを正確に描こうとするあまり、
その形のみならず、気持ちよくバスタブに浮かんでいるモデルさんの心の中まで
思わず描き写してしまったんではないだろうか。

芸術作品というのは、その形以上に、
描いた者の心や対象の心というものが恐ろしいほど映し取られてしまうものなのです。
場合によっては作者が意識していないものさえまでも。
優れていれば優れているほどそうともいえます。

絵のモデルさんも死のうとして水に沈んでいるわけでなく、
きちんと仕事して、きちんとギャラをもらって帰ろうと、
生きる気満々で水に浮かんでいるわけですから(^_^;)
そのモデルさんの生気を自分が感じ取ってしまったともいえるのかもしれません(笑)

つまりは、そんなこんなモデルさんの気持ちが知らずに写し取られ、
絵を見た自分に伝わり、涼を感じさせた。
まあそういうことです。


皆さんもハムレットがどうのとかそういう予断を捨て去り、
自分のような無垢な心で絵そのものをじつと見つめれば、
きっと水に浮かんでいる心地よさ、気持ちよさ
みたいなものを感じていただけることができるのではないかと。
半分本気にそう思います(笑)