らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【詩】「ヨット 」 さとう・よしみ

今週のお題「海」



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 ヨット

  作詞 さとう・よしみ 
  作曲 湯山 昭 


  波をけって うねりをのりこえて
  白い帆のヨットが 走る走る走る   
  海は広い  広くて青い   
  風のうたは  ピープー      
  カモメのうたは ギィヨギィヨ    

  風をうけて ななめにかたむいて 
  赤い帆のヨットが 走る走る走る   
  海は広い 広くて青い     
  風のうたは ピープー      
  カモメのうたは ギィヨギィヨ  



夏の海の歌と言うと、やはり日射しの強い太陽を思わせる
エネルギッシュな 歌が多いように思います。
例えていえばTUBEみたいな。

しかしここにはそうではない歌があります。
子供の頃聴いた「ヨット」という曲。
ご存知でしょうか。

曲をつけないで詩だけ眺めてみても、
ギラギラとした生命力がある暑い夏の印象は受けません。

むしろ寂しげですらあります。

他の人の気配がしないんです。この歌は。
広くて青い海に小さな帆のヨットはポツンと一艘走っている。
聞こえてくるのは風の鳴る音とカモメの鳴き声のみ。

この詩のオトマノペが素晴らしい。

風のうたは ピープー      
  カモメのうたは ギィヨギィヨ

風は、独り、沖のヨットを見ている私に語りかけてくるようであり、
かもめの鳴き声もそれに相和しているようにも感じる。

しかし、私はそれに反応することはない。
いや、届くことはないというべきでしょうか。

この作品、私のことはほとんど書いていないですが、
とても寂しそうに佇んでいるのを感じさせます。
まるで、 ぽつんと沖に浮かんでいる小さなヨットのように。

そういう私の心情を曲は見事に捉えていると思います。
こんな短い曲でも途中で転調するのですが、
その瞬間、海の青さが映えるごとく、パッと風景全体が明るくなるのですが、
すぐまた物思いに沈んだ感じに戻ってゆく。
というよりも一旦明るく見えた分だけ、
さらに寂しさが増していくようにも感じられます。



こんなに短い作品ですが、
海の情景と私の心情とがあいまって、
作品に触れた者のイマジネーションがふくらんでいく。

明るいがゆえに却って寂しさが増してゆくというような心情、
誰しも持っていて共鳴する部分があるのかもしれません。

素晴らしい作品だと思います。
今回のお題は「海」と聞いて、
まっさきにこの歌が思い浮かびました。

ヨット - YouTube