らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014「熱狂 の日」

 

 
ちょっと日にちが経ってしまいましたが、
ゴールデンウイークに行った東京国際フォーラムでの音楽祭の話題を少し。

5月5日ゴールデンウイーク最終日、
待ちに待っていた「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」に行ってきました。
当日朝方都心に震度5弱の地震があったので、
もし出かけるまでにもう一度大きな地震があったら行くのを止めようと思っていたのですが、
幸いにもそのようなことはなく、無事に行ってくることができました。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン
ゴールデンウイークの都内の音楽祭して定着しつつある催し物ですが、
今回は区切りの10回目だったこともあり、
ひときわ盛り上がっていたように感じました。




入り口ではこんな格好をした人と記念撮影なども。




そしてワゴンの屋台も多数出ており、




その中には、帝国ホテルのワゴンなども。




野外無料コンサートの様子です。




野外の休憩エリアの一角に設置されていたのですが、
お昼の時間帯だったこともあり、黒山の人だかりとはこのこと。


この音楽祭は、フランス人ルネ・マルタンが、
「低価格で質の高い演奏を」「子供などなるべく多くの人々に音楽を」というコンセプトで、
母国フランスで成功を収めたもので、
この日本でも2005年から開催されているものです。
チケットも高くても3000円程度に抑えられ、子供であれば500円などというものもあります。

音楽祭のコンセプトの詳細については、こちらをご覧になってみてください。
http://www.lfj.jp/lfj_2014/?id=nav


で、今回自分がチケットを取ったのはこの2公演。

・ベートーベン:ピアノソナタ「ワルトシュタイン」「熱情」
ピアノ:アブデル・ラーマン・エル=バシャ

ラフマニノフ交響詩「死の島」、ピアノ協奏曲第3番
ピアノ:レミ・ジュニエ(ヨーゼフ・モーグ急病のため)
ウラル・フィル 指揮:ドミトリー・リス

 
まずベートーベンのピアノソナタの公演。

ピアニストは黒のスーツが似合う、スラリとしたダンディなシリア系フランス人の50代の男性でした。
曲目は「ワルトシュタイン」と「熱情」。
どちらもベートーベンのピアノソナタを代表する大曲ですが、
今回、特に「熱情」は演奏者の個性よりもベートーベンそのものを感じさせる
非常に骨太な堂々とした演奏でした。
クラシック音楽の演奏というのは一流になればなるほど
演奏者の個性を感じさせるものが多いのですが、
作曲家そのものを感じさせる演奏というのは、実はあまりお目にかかれないのです。

ところで、クラシック音楽のコンサートにはいろいろな観客がいます。
その曲の楽譜を広げながら、指で丹念に音符を追いながら聴く人。
オペラグラスで演奏者の演奏する指や表情をずっと見ながら聴く人。
じっと目を閉じて瞑想して聴いている人などなど。

自分はどうかというと全体を見ながらソリストの指の動きを注視しながら聴くことが多いです。
ですからチケットを取る時は、
できればピアノの鍵盤が見えるホールの左側の席を取ることが多いんです。


次の公演はラフマノフのピアノ協奏曲第3番。
実は演奏予定のピアニストが急病により
急遽代役のピアニストによる公演となりました。

ウラル・フィルはロシアの地方オーケストラだと思うのですが、
これが非常に掘り出し物でした。
重厚にしてかつ透徹感のある、胸にズシンと響く音で、
今回はお国もののラフマニノフということもあったのでしょうが、
素晴らしい音楽を聴かせてくれました。

代役のピアニストであるレミ・ジュニエも素晴らしかった。
神童と呼ばれた頃のキーシンを思わせる童顔の青年でしたが、
いい意味で、これほど繊細で感傷的なラフマニノフを聴いたことがない。
実はクラシック音楽のコンサートというのは、
このような代役が素晴らしい演奏をすることで
一躍世間の注目を引くことが多々あるんです。
まさにそういう演奏でしたね。

ところで、自分はロシアには縁もゆかりもありませんし、行ったことすらない人間ですが、
この曲の第3楽章のメロディに触れると、
なんともいえぬ懐かしさのようなものに包まれることがあります。

そのようなメロディに、オーケストラの重厚感あふれる透徹感のある音、
繊細でセンチメンタルティックなピアノが重なって、
思わず胸にジーンと込み上げるものすら感じました。

そういう素晴らしい演奏というものは、場を支配します。
5000人ほどの一番大きなキャパの、ほぼ満員の会場、
必ずしもクラシックに慣れ親しんでいる人ばかりではない、
その会場がオケとピアノの音に引き込まれ、
水を打ったように物音ひとつ立てずに音楽に聴き入っていた。
これは凄いことです。

人は出会いによってその人生をより豊かにすることができるといいますが、
出会いとは生きている人間だけではありません。
文学だったり絵画だったり音楽だったり、
そういう、人の思いを閉じ込めたものも含まれます。

実は自分、とても素晴らしいと感じるものに触れると、
頭がズキズキ脈打つように痛くなることがあるんです。
脳が共鳴を起こすといいますか(^_^;)
でもこれは、ある意味、とても心地よい頭の痛みです。
ここ数年、そのようなものにお目にかかることはなかったので。

そういうものに今回出会えた自分は本当に幸せでした。



(参考)ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番第3楽章
http://www.youtube.com/watch?v=wkci_fyEot8
よろしかったら、ここでは音もさることながら
譜面(ふづら)をご覧になりながら聴いてみてください。
このような、幾何学的な美しい表情の楽譜が、かような音楽を奏でるのかと
新鮮な感動を覚えられるのではないかと思います。
四線のうち上二線がピアノパートです。