らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】27 レナード・バーンスタイン 前編

 

グレン・グールド以来の久々のクラシック音楽家の記事になりますが、
記事の内容から、今回は【人物列伝】のカテゴリーで紹介したいと思います。
今回、紹介する人は、この人です。




彼の名は、レナード・バーンスタイン

本来はクラシック音楽の指揮者として活動していた人ですが、
それにとどまらず、多方面の音楽の分野でも活躍した才人です。

自分が、バーンスタインを初めて知ったのは、
クラシック音楽の分野ではなく、ミュージカルの分野でした。
「ウエストサイドストーリー」は、彼が音楽監督をつとめた作品として有名で、
もしかしたら、一般的には、こちらの方が
馴染みが深いといえるかもしれません。




彼が手がけた「ウエストサイドストーリー」の名曲は数多くあれど、
1曲挙げるとするならば「トゥナイト五重唱」を挙げたいと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=hU-Rt-5vjjU
このミュージカルは、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」をベースに、
当時のニューヨークの社会的背景を織り込みつつ、
イタリア系とプエルトリコ系の2つの異なる少年グループの対立と、
その犠牲となる、互いのグループに属する若い男女の恋愛と死を描いたものです。

この五重唱は、各グループの登場人物それぞれの思惑や想いが
最初は各々思い思いバラバラにという感じなのですが、
それらが次第に糾合して、
好むと好まざるに関わらず運命的に絡み合い、
クライマックスになだれ込んでゆく様が音楽的に見事に表現されています。

ハーモニーという観点からすれば、
もっとそれぞれの声部が溶け合っている音楽は、いくらでもあると思うのですが、
この曲で感じるのは、人間の感情と感情のぶつかり合い。
それが絡み合って、運命的に糾合せざるを得ないものを予感させ、
ミュージカルをみていて、否が応でも気持ちが盛り上がっていきます。

作曲という分野は、実は他の多くの指揮者や演奏家も手掛けているのですが、
なかなか末永く親しまれている作品は、多くありません。
バーンスタインの、この作曲家としての一面だけでも、
彼の名を永きに残す業績であるといえるでしょう。


次に指揮者としてのバーンスタイン

バーンスタインという人は、クラシック音楽の指揮者というイメージにありがちな厳格な雰囲気でなく、
実に愛嬌のある茶目っ気あるキャラクターなんです。

今回は、それを表す指揮ぶりを紹介します。
http://www.youtube.com/watch?v=oU0Ubs2KYUI
曲は、ハイドン交響曲88番で、ウィーンフィルを指揮した時の映像です。

指揮者なのに、指揮棒を振らないでオーケストラを統率している(^_^;)
まさに弓を使わない弓の名人を描いた中島敦名人伝」の世界(^^;)

中には、おふざけがすぎるんじゃないの?
と感じる方もおられるかもしれません。

実をいいますと、この演奏、本演奏後のアンコールとして為されたものでして、
素晴らしい演奏をしたオーケストラを賛美するために、
アンコールでは、自分もじっくり楽しんで、オーケストラの音に聴き入ってみようという、
バーンスタイン一流の茶目っ気あるパフォーマンスではないかと思うんです。

しかし、このハイドン交響曲の演奏、
どの指揮者の演奏よりも愉しく躍動感に満ち、
ぐいぐいと聴く者を惹きつけて放さない魅力があります。
バーンスタインは非常に情熱的な指揮をするのですが、
まさに演奏に、それが乗り移ったかのよう。
自分が聴いた数々のハイドン交響曲の中でも、最高の部類に属するもので、
ハイドンの素晴らしさを存分に引き出している演奏だと感じます。

先に、指揮棒を振らないで見事に指揮をする、まさに名人伝の世界といいましたが、
まんざらそれはジョークでもないかもしれません。


バーンスタインは、このような作曲家、指揮者としての顔以外に、
まだまだ、魅力的な顔をたくさん持っています。
後編は、バーンスタインの、その他の2つの顔について書いてみたいと思います。


なお、中島敦名人伝」についての過去記事です。
興味のある方はご覧になってみてください。