らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】27 レナード・バーンスタイン 後編

 

後編です。
今回は、まずピアニストとしてのバーンスタインを紹介します。

実は、自分が彼の音楽活動の中で最も心惹かれるのが、このバーンスタインなんです。
こちらのモーツァルトのピアノ協奏曲第17番の映像をご覧ください。
http://www.youtube.com/watch?v=IvhxfXeGees
バーンスタインが自らピアノを弾きながら指揮をしていますが、
これは弾き振りといいまして、
実はモーツァルトやベートーベンの時代は、これが普通でした。
オーケストラが大規模になるにつれ、そのコントロールが難しくなっていったため、
指揮者と演奏者が別々となり、今日の形になったといわれています。

バーンスタインの弾き振りは、見ていて本当に心ウキウキする楽しいものです。
彼の、絵になる艶やかで生き生きとした舞台姿もさることながら、
ピアノの音色が、とても愉悦的でチャーミングで美しい。
彼により奏でられるピアノの音色は、無垢で純白で、
例えていうなら、まるでモーツァルト自身が弾いているかのような、
他のピアニストでは聴くことのできない魅力を持っています。

またバーンスタインは、長年、ニューヨークを拠点に活動しておりまして、
ガーシュウィンラプソディ・イン・ブルーの演奏もお勧めです。
この曲はジャズ風の曲想を多分に含んでおり、
バーンスタインの魅力全開の演奏で、洒脱で、変幻自在な音色の変化に、
あたかもニューヨークの香りが漂ってくるような粋な演奏とでもいいますか。
http://www.youtube.com/watch?v=xxb7yNG0DGc
個人的趣味としては、ややモーツァルトの方が好みなのですが、
それとはまた全く違う魅力を持ったバーンスタインのピアノに、
甲乙つけ難い魅力があるのは確かです。


そして、最後に紹介するのは、教育者としてのバーンスタイン

彼は若い時から後進の指導に熱心で、
世界中から彼を慕って若者達が集まってきました。
かの小澤征爾さんもバーンスタインの弟子の1人なんです。

今回見ていただきたいのは、こちらの映像です。
http://www.youtube.com/watch?v=LsXypxh0HRs
1990年7月札幌での若者のオーケストラの指導の映像なのですが、
この時、バーンスタインは末期の肺ガンに犯されており、余命いくばくもありませんでした。
実際、彼は、この3ヵ月後にこの世を去ります。

水もしたたる色男だった彼の容貌も、病によるやつれから、
艶やかさを失い、目も落ちくぼみ、声もしわがれ、
枯れ木のごとく朽ちかけている感があります。

しかし、その枯れ木のように朽ちかけた彼の姿に、
思わず見入って惹きつけられてしまう力を感じます。

これが死が間近に迫った人間の力だろうか。
最後まで自分の内なるものを燃やして、若い人達に与えようとしている。
年齢的に気力体力共に最も充実しているはずの自分でさえ、
思わず圧倒されてしまい、その迫力に後ずさりしてしまうような、
そんなエネルギーを感じます。

生を全うするとは、
自分が人生で集めてきたものをあくせくと確保することでもなく、
また物を分け与えることでもない。
自分が人生で得てきた内なるものを、
これから生きてゆこうとする人達に伝えることだと強く感じます。


かつての彼の弟子である小澤征爾さんが、
食道ガンで食道全摘出手術し、満身創痍になりながら、
78歳となった現在も、いまだに現役の指揮活動にこだわるのは、
そのような師の志に自らも続いて行こうという
強い意志の表れなのかもしれません。





画像上は、日本に帰国した際のバーンスタイン小澤征爾2人の若き日のツーショット

画像下は、食道全摘出手術から復帰直後の小澤征爾