らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「戦国の長嶋巨人軍」志茂田景樹



 
先日、織田信長桶狭間合戦の記事を書いた際、
実はこの作品のことが頭にあって、記事を書こうか迷ったのですが、
まあ夏休み最後のご愛嬌ということで、今回掲載することにしました。

この本の要旨をかいつまんで言うと、
ジャンル的には、一時期大いに流行りました架空戦記ものの作品でして、
桶狭間合戦に長嶋巨人軍が乱入する」って話です。

長嶋監督が戦場に乱入して、どうするの…?
とおっしゃるかもしれませんが、
話のあらすじはこうです。

199X年、長嶋巨人軍は冬期キャンプで、
精神鍛練の一環として自衛隊の演習に参加しておりました。
が、しかし、突然の天変地異に襲われ、
自衛隊の兵器ごと、1560年の桶狭間にタイムスリップしてしまいます。

戦国時代に心ならずも移動してしまった長嶋監督曰わく、
「じゃあ、俺たちはいわゆるタイムスリップをしたということか。
……しょうがない、これも俺たちの運命だ。」
と、あっさり自分達の運命を受け入れます。
さすが国民栄誉賞を取る人は肝っ玉が違います。

そこにちょうど、信長に攻められ窮地に陥った今川義元を救おうと、
今川勢の援軍が現れます。
その時、織田勢の危機を察した長嶋監督の取った行動とは…

「よし、撃てい!」
長嶋は、90ミリ拳銃を振り回して命令した。
ゴジラ松井秀喜)、落合らは、64式小銃で騎馬武者の群れを狙った。
ダダダダダッ!……
右往左往する騎馬武者がバタバタと落下していく。
長嶋は、ニヤッと笑った。


あれっ(^_^;)長嶋さんてこんなキャラだったかな。
国民栄誉賞にふさわしい…のか(-.-;)?!
それに松井や落合選手も素直に従っている場合じゃあ…

まあ、とにもかくにも信長は、
こうして史実通り桶狭間にて今川義元を討ち取り、
手柄を立てた長嶋巨人軍は、信長の覚えめでたく、
今後の戦の加勢及び領内で野球をし、それを広めることを許されたのでした。

この時の長嶋巨人軍の主なメンバーは、この作品執筆当時の選手達で、
落合、原、桑田、槙原、齋藤、川井、大久保など、
松井秀喜選手もルーキーとして参加しています。

そうして野球を広めるうちに、
信長も家臣団を編成して自ら野球チームを作り、
長嶋巨人軍と親善試合をしたりなんかします。

その試合で、なんと柴田勝家が槙原投手からホームランを(笑)

柴田勝家すごいなあ…
プロの投手の速球ってなかなか打てませんよ。

ところで、槙原投手、愛知県の大府(おおぶ)高校出身でして、
桶狭間の古戦場にほど近いところに、その高校はあります。

しかしこの長嶋監督と巨人軍の選手の面々、
過去にタイムスリップしてしまい、現代に戻る手だてが無くても、全く悩みがありません。
長嶋監督指示のもと、日々、黙々と戦争し、黙々と野球の試合をしています。

良くいえば、その日その日を全力で生きることに徹している。
悪くいえば、何も考えていない(笑)

作者の志茂田先生も、異次元に飛ばされた選手達や現代に残された家族の苦悩、
一緒に移動してきた自衛隊の兵器の弾薬や燃料の補給、
メンテナンスなどの問題を全部すっ飛ばして
怒涛のごとくストーリーを展開しております。

そんなこんなで10年が経ちました(笑)

最後は1571年の三方が原の戦いで、
武田信玄率いる武田騎馬軍団を、
自衛隊の近代兵器で木っ端微塵にし、
長嶋監督の会心の笑みで話は終わります。

つまり長嶋巨人軍は現代に帰ってこない(^_^;)

本当はもっと詳しく書きたいのですが、
実は昨年の引越で、荷物を思い切って整理しまして、
今後絶対に読みそうにない本は処分してしまい、
その中にこの「戦国の長嶋巨人軍」も(笑)

ですから、おぼろげな自分の記憶とネット検索で
思い出した内容をつぎあわせる感じで復元しております。

最後に、この本にフォローを入れるわけではありませんが、
もし信長が野球というものを知ったら、
新しいもの好きですし、意外に喜んだかもしれません。
野球のような集団スポーツというものは、
チームプレイが必要ですし、個々の技能というものも高くないといけないですから、
戦闘の組織力みたいなものと相通ずるところがありますので、
信長好みなのではないかとも感じます。

あと、この作品が、他の架空戦記ものと一線を画しているのは、
他の作品はいわば歴史シミュレーションを小説化したような形式なのですが、
この作品は、現代人と戦国武将達が野球というスポーツで交流するという
奇天烈ながらも読んでいて
登場人物に血が通っているのを感じるというか、
馬鹿馬鹿しいながらクスッと笑える楽しさがあるというか。
作品全体としては少々雑で、正直退屈なところもあるのですが、
そのテーマの楽しさで、強引に押し切って読ませる部分があります。


ちなみにこの作品、著者の志茂田先生ご存命のため(^_^;)
当然まだ青空文庫には収録されていません。