らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【映画】千と千尋の神隠し 後編



後編です。

千尋が油屋で懸命に働いていたある日、
竜の姿のハクが傷だらけの瀕死の重傷を負ってしまいます。

千尋は、ぐったりしているハクを見て、
もはや、おろおろしたり、めそめそしているだけの女の子ではありません。

ハクを助けるため、苦団子、それは河の神からもらって豚になった両親に食べさせれば
元に戻るかも、と大事に取っていたものですが、
それを食べさせるなど懸命に看護します。

ここでちょっと笑ってしまうのが、
千尋はハクには積極的に苦団子を半分与えるのに、
カオナシには「ホントはあげたくないけど…」と若干渋々あげるんです。
まあ、その時のカオナシは、居酒屋で悪酔いして暴走しているような感じなので、
緊急避難的に仕方ないんですけれども。

カオナシもハクが恋敵?では相手が悪いのですが、
金塊(もどきですが(^^;))までプレゼントして、千尋の気を引こうとしたのに…
ちょっとかわいそうな気もします(^_^;)
女の人はそういうところは、結構はっきりしているというか(^^;)
まあ千尋は優しい方ですけども。

話は外れましたが、
実は、ハクは、銭婆婆という魔女の、ある大事なものを湯婆婆の命令で盗んだことから、
重傷を負ってしまうのです。
まあハクにはハクの混み入った事情があるんですけれども。

千尋はハクを許してもらうために、銭婆婆の家にその大事なものを返しに行くのですが、
その時の、静寂の海とその上を走る電車の風景が素晴らしく美しい。
作品中、自分が一番好きな絵です。

ところで、銭婆婆というのは、湯婆婆と姿形が全く同じな双子の魔女なのですが、性格は正反対。
油屋の元締めの湯婆婆は強欲でじゃじゃ馬っぽいというか、
とにかく騒がしいワル婆という感じですが、愛すべき悪役?という感じがあります。
反対に、銭婆婆は、厳しくも優しく、落ち着いて思慮深い感じです。
この役の声を1人で使い分けて演じた夏木マリさんは、すごいですね。
作品の声優の中で、一番良かったかも。

銭婆婆は千尋の様子を見て、許すに値すると感じたのでしょう。

許されて、銭婆婆のところから竜の姿のハクと千尋が、夜空を飛んで帰ってゆくシーンは、実に神秘的です。

ハクも、千尋のおかげで、自分の名前を取り戻したから、もう大丈夫。
というようなことを千尋に言います。
自分なりにその意味を考えますと、
自分の名とは、世界でひとつしかない、唯一のものですから、
自分の名を取り戻すとは、自分の命(人生)は、自分の意思で決めてゆくことができる。
というような意味なのかなと思ったりします。

しかしながら、執念深い湯婆婆は千尋に、最後の試練を与えます。

このたくさんの豚の中から、お前の父と母を当ててみろ。
そうしたら帰してやる。

周りは、そんな厳しい問題を…と総ブーイングですが、
千尋は全く慌てません。
しっかりと見据えて
この豚の中にお父さんとお母さんはいません。

とはっきり解答します。
テストの問題で一番難しいのが、この「正解無し」という問題なんです。
なぜなら、全ての選択肢に自信がなければ
「正解無し」の解答は出てこないですから。

千尋は自信をもって、この問題を見事クリアしました。
これはさすがの厳しい湯婆婆も認めざるを得ません。

千尋は今までのように他人依存の甘ったれじゃない、
自分自身でしっかり考えることのできる、
ハタをラクにすることができる、自律した人間に成長しました。

かくして千尋は見事両親を助け出し、神隠しの世界から抜け出すことができたのです。


最後のシーンで
千尋が今までいた不思議な世界から、そっと風が吹いて、
千尋を撫でて、別れを言ったような、
それに千尋も気づいたような気づかないような…

でも千尋はその気配のようなものに、もはや躊躇したり迷ったりなどしません。

まっすぐに自分の未来に向かって歩いてゆくことができる。
今までこの不思議な世界で、関わってきた者と分かち合った心は、
しっかり自分の中に生きて、残っている。
だから彼らといつでも会うことができる。

エンディングで流れる主題歌「いつでも何度でも」の歌詞は、
そのようなものを暗示しているようにも思います。

最後に蛇足ですが、
主題歌の「いつでも何度でも」もいい曲なのですが、
もう一曲、自分の心に深く残った曲があります。

それはカオナシが、金塊(もどき)をみんなにバラまいている時に、
油屋の従業員が争って、我先にと金塊を拾うのですが、
その時、太鼓持ちのカエルがリズミカルに歌う


御大尽様の御成りだよ♪
あ それ おねだり♪
あ おねだり♪

という歌。
あの歌は不思議と心がしびれます。

ジブリ作品のすごいところは、
こういう小ネタにも、決して手を抜かないところなのかもと思います。