らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【クラシック音楽】同詩異曲の魅力 スターバト・マーテル(悲しみの聖母)

今回は「同詩異曲の魅力」をお送りします。

スターバト・マーテルという詩があります。
邦訳すると「悲しみの聖母」。
中世の13世紀に創られた詩です。


悲しみの母は立っていた

十字架の傍らに涙にくれ

御子が架けられているその間

呻き悲しみ

歎くその魂を

剣が貫いた

なんと悲しく打ちのめされたことか

あれほどまでに祝福された

神のひとり子の母が

そして歎き 悲しんでいた…

http://2style.net/misa/kogaku/kasi07.html

で始まるものですが、
老いた母が、我が子の死を悲しみ、
その骸の前で静かにたたずんでいる
その詩の内容は人々の心を打ち、
様々な作曲家が、この詩に曲をつけました。
その数は600とも言われています。

1つの詩に、様々な作曲家がインスピレーションを受け、
自分が感じたままに曲をつける。

例えて言うなら「川の流れのように」の歌詞に、
ユーミン井上陽水さん、山下達郎さん、小室哲哉さん、ゆず、いきものがかりなどが
それぞれ感じたままに曲をつける。

クラシックにはこういう楽しみ方もあるんです。


まず一般的に有名で、
演奏会でもよく取り上げられるのが、
ロッシーニ(1792‐1868)とドヴォルザーク(1841‐1904)の作品です。
どちらの作品も大編成のオーケストラと
大勢の合唱団及び声量豊かなオペラ歌手を使った、
ある意味、ベートーベンの第九のような曲になっています。

が、しかし…なんといいますか、
歓喜の歌なら、それもまた良しですが、
スターバト・マーテル(悲しみの聖母)で、それはどうかな…と

例えていえば、
あまりもの騒々しさに、眠りについていたはずのキリストが、
思わず飛び起きちゃうといいますか…

とにかく、構成が大規模で、長くて、大音響。
特にこのようなテーマの曲では、
自分的にあまり好みではないんです。

自分が聴かない曲を聴けとはいえませんから、
飛ばし飛ばしで大体の感じを掴む形で、
見ていただければ十分かと思います。

でも好きな方もいらっしゃると思います。
好きな方ごめんなさい。

ロッシーニ
http://www.youtube.com/watch?v=ViJHqoZqdO0&feature=related
ドヴォルザーク
https://www.youtube.com/watch?v=E_AkAGqJWTA


そしてもうひとつ演奏される機会が多いのが、
ペルゴレージ(1710‐1736)の作品です。

前2作品と比べると、編成も小規模で、
内省的であり、子を失った母の静かな悲しみが伝わってくるといいますか。
「悲しみの聖母」のイメージに合っているような気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=G_naJFfy1BQ&feature=related

自分の趣向としては、そのような曲調の「悲しみの聖母」を追求してゆくことになります。

これはサンチェス(1600頃‐1679)の作品。
ペルゴレージのものより、さらに簡素な編成で、独唱に伴奏の楽器のみ。
小さければ内省的というわけではありませんが、
独唱者が淡々と歌いついでゆく感じが美しい曲です。
ソプラノの明るめの声色が、却って悲しみを増しているようにも思います。
http://www.youtube.com/watch?v=OC0ETAixoP8&feature=related

次はパレストリーナ(1525頃‐1594)。
人間の声のみによる編成です。
人間の重なり合う声ってこんなに美しいのかと思わせる曲です。

素晴らしい清々しい、心洗われる曲なのですが
母の悲しみというよりは、
神の栄光みたいなものを表現しているようにも感じます。
そう意味では自分の考えれ内省的とは、少し違うかも。
でも好きな曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=gsJMht6CPqw

なお、クラシック音楽は時代を経るごとに、
その構成が大規模になっていく傾向にありますが、
一方で、そこから小規模なものに回帰していくものもあります。

インベルガー(1803‐1901)の作品は、
ペルゴレージの作品と同規模の編成と合唱による演奏ですが、
旋律は美しく、胸に迫ってくるものがあります。
http://www.youtube.com/watch?v=ni842BIsogU&feature=channel&list=UL

そして最後に数ある作品の中でも、
自分が一番好きなのが、
ヴィヴァルディ(1678‐1741)の作品。
独唱と少人数な楽器編成による曲です。

独唱と楽器がバランスよく、うまく溶け合い、
なんともいえぬ切なさを醸し出しているように感じます。
特に楽器パートは、ヴィヴァルディのものが最高に気に入ってます。
冒頭部分のヴァイオリンの響きが、たまらなく好きなんです。
http://www.youtube.com/watch?v=cbt18mD-nVE&feature=related

実を言いますと、
独唱者の声色や楽器の演奏の仕方で、
曲調が微妙に違ってくるので、
理想の演奏を求め、
ヴィヴァルディの曲だけで30枚くらいCD持っています(^_^;)

紹介したのは、比較的クセのない美しい演奏のものです。
 
なお、記事を書いている途中で、
「悲しみの聖母」の詩を生み出した背景がよくわかる
映像の付いたものを見つけましたので、
おまけで添付しておきます。
自分も映像及び演奏とも今回初めて知りました。



以上いかがだったでしょうか。
全て同じ歌詞とは思えぬ曲のバリエーションや個性を感じていただけたでしょうか。

それぞれの作曲家が趣向を凝らして、
得意な構成、得意な楽器を駆使し、
曲を書き上げています。

そういうものを感じていただければ、
自分としては、もう何も言うことはありません。