らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「夢十夜」第十一夜 もたんもぞ編

第十一夜

中学生の時こんな夢を見た。

僕は疲れきって夢の中で机にうつ伏して寝てしまっていた。

すると隣で人の気配がする。
うつ伏したままの状態で、うっすらと目だけ開けると、
机が両並びになっていて、隣で自分よりちょっとお姉さんの感じの女の子が一生懸命勉強している。

ピンクのセーターを着て、長い髪をアップにして、睫毛(まつげ)が長く瞳がきれいな女の子。
顔つきは机の蛍光灯の光が反射して照り返り、今ひとつはっきりと見ることはできない。

彼女はこちらを振り向くことなく、一生懸命に勉強している。

僕はその横顔を見ながら
「だれ?」と声をかけた。

しかし彼女はそれに答えることなく、真っすぐ机に向かって勉強を続けている。

しばらく彼女が勉強する横顔を見つめていたが、次第に眠くなりそのまま眠ってしまった。


朝になり再び目が覚めた時、もう隣に机は並んでおらず、あの女の子もそこには居なかった。

もう一度会いたいと願っているが、あの時以来、一度も彼女に会うことなく、今に至っている。



                                                      完
 
実は自分には姉がおりましたが、生まれてまもなく亡くなっています。
ですから姉の姿を一度も見たことがありません。

姉は生まれた直後すでに瀕死の状態で、長くもたないと医者から宣告されたようです。
当時は今のような医療システムがありませんでしたから、仕方がなかったのかもしれません。

このことについて自分から親に積極的に聞いたことはありません。
親がたまにぽつりぽつり話すことを断片的に知っているだけです。

当時このままではかわいそうだからと、父はすぐ出生届を出しに役所に行ったそうです。
姉は出生届が受理されて数日で亡くなりました。
その2年後、自分が生まれました。

母はもし姉が無事だったら自分は生まれてなかったかもしれないと言ったことがあります。
いわば姉と自分は入れ替わりで、この世に生を受けたようなものなわけです。

自分が中学生の時は、部活動やらなんやらで、
とにかく体が疲れて毎日のように勉強の途中でうとうとしてしまい、
机にうつ伏して寝てしまっていました。
その時期に見たのが冒頭に紹介した夢です。

母にその夢の話をすると「お姉ちゃんが励ましに来たのかもしれないね」と言いました。
自分もそうかもしれないと思いました。

そこでこのままではいけないと考えたのが、
夜は疲れているのでそのまま寝てしまって、朝早起きして勉強するという生活パターンです。
この方法は自分に合っていたのでしょう。
朝早起きしても眠たくなく、学校に部活動に勉強に充実した日々を送ることができました。
その習慣は形を変えながら今も続いています。

夢は見てもすぐ忘れてしまうと言われますが、この夢だけはなぜか忘れることなく、
一生懸命勉強していた女の子の横顔を今もよく覚えています。