らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

「夢十夜」第十夜 夏目漱石



ラストの第十夜はストーリーがやや支離滅裂なところがありますが、
漱石ってこんな夢を見るんだという物珍しさとストーリーがコミカルな事から結構気に入っています。


この夢の主人公は漱石ではなく、町内一の好男子で、善良な正直者の庄太郎という男です。
漱石の知り合いなんでしょうか、全く架空の人物なんでしょうか、そこのところはよくわかりません。

その庄太郎がパナマ帽(画像参照)をかぶって、いつものように水菓子屋の店先へ腰をかけて、
往来の女の顔を眺めていると、ある夕方立派な服装をした女が、一番大きな籠詰を買います。
それが大変重いので庄太郎は女の家までそれを持っていくことになります。

電車を下りるとすぐ広い青草の原に出ます。
女と一緒に歩いて行くと、急に絶壁のてっぺんに出ます。

その時、女が庄太郎に「この絶壁から飛び込んで御覧なさい」と唐突に言います。

庄太郎は躊躇します。当たり前ですけども(^_^;)

そしてさらには「もし思い切って飛び込まなければ、豚に舐められますよ」と
???なことを言われてしまいます。
庄太郎は豚が大嫌いなんだそうです。

なんと夢らしい、わけのわからん展開です(^_^;)

庄太郎が躊躇していると、豚が一匹鼻を鳴らして来たので、
庄太郎は仕方なく持っていたステッキで、豚の鼻頭を打ちます。
豚はぐうと云いながら、ころりとひっくり返って絶壁の下へ落ちて行きます。
しかしまた一匹、また一匹と豚は現れ、その度にステッキで打ち払い、
豚は絶壁の下へ落ちて行きます。

しかし、ふと向うを見ると、遥かの青草原の尽きる辺りから幾万匹か数え切れぬ豚が、
群れをなして一直線に、この絶壁の上に立っている庄太郎をめがけて
鼻を鳴らしてやってくるのが見えます。

なんたる宮崎駿ジブリ映画的展開(^_^;)

庄太郎は必死で次から次へと押し寄せる豚の群れを打ち払いますが、
とうとう精根が尽きて、豚に舐められてしまいます。
そうして絶壁の上で卒倒します。

このストーリーは作者を伏せれば、誰も夏目漱石とは思わないのではないでしょうか。
自分はこの場面、どうしても宮崎駿風アニメ画が浮かんでしまうんです(^_^;)

この夢について、豚は性欲の象徴で漱石は性欲を必死に抑えようとしているのだと
分析する向きもあるようです。
しかし、ここはそんな無粋なことを言わないで、
無数の豚の群れが庄太郎に突進する突拍子もない情景を、素直に楽しみたいものです(^^)