らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】15 このころの我が恋力


 
今回感じ入った歌は



このころの
我が恋力
記し集め
功に申さば
五位の冠(かがふり)



詠み人知らず



最近の
私のモテぐあいを
統計して
功績として申請したら
五位の冠ものだな



万葉時代の人々は実生活と歌の題材が直結していて、
歌を読んでいてほのぼのとするんですよね。
いつぞや紹介した、この蓮の葉に比べればウチのは芋の葉だなという歌とか
鰻は体にいいですよと友人に勧める歌などなど。
今回もその類の歌です。
歌の背景や意味がわかりにくいかもしれませんが超訳すると
居酒屋でサラリーマンがビールを飲みながら、
「俺は会社の仕事は平社員だけど、最近の女の子にモテモテ度合いだったら
課長級くらいは軽くいっちゃうだろうな」
というたわいない自慢といいますか、そんな感じの歌です(^_^;)

千年前のサラリーマン川柳とでもいいましょうか。
話外れますけど、今行われているサラリーマン川柳は後世に残るかもしれませんよ。
サラリーマンの悲哀とちょっとコミカルな部分が見事に融合している素晴らしさがあります。
人間笑いだけでもダメですし、悲しみだけでもダメですし。

作品を挙げると

ときめきは
四十路(よそじ)過ぎると
不整脈


円満は
見ざる言わざる
逆らわず

などなどです(^_^;)


さて話戻りますが、
今回の歌を詠んだ名もなき役人は、
どういう生活を送っていたのか解説があったので紹介します。

当時の役人は今の時期なら朝6時半で遅刻だったそうです。
灯りは貴重ですから太陽の昇り沈みが始業時間を左右したのでしょう。
今の時期朝5時にはもう明るいですからね。

歌に出てくる「功」は昇進の根拠となる功績のことで、
上の上から下の下まで9段階で評価され、なかなかシビアだったようです。
無断欠勤なども評価に響き、きちんと理由を添えた休暇届を提出したようです。
理由としては、
今でも理由としてなじみがある冠婚葬祭から
溜まった洗濯物を洗いたいといったものまであったようですね(^_^;)

下級役人は給与が低く生活も大変で、
日勤+夜勤合わせて1年間で延べ500日以上出勤した豪の者もいたようです。
日曜休むというのはキリスト教の習慣なので、規則的な定休はなかったでしょうね。

今回の歌はそんな生活の中、
酒でも飲みながら鬱憤晴らしで歌ったのではないかとのことでした。

最後に、今回掲載した画像は、落書「大大論」といわれるもので、
議論している同僚の役人を仕事の書類である経文の空白部分に落書きしたものです。
こんな感じのおっさん、今でも大阪の道頓堀辺りでお昼食べてそうですよね。

しかしこの落書き、きちんと提出すべき書類の空白部分にこんなに大きく書いて、
書いた人は大丈夫だったんでしょうか(^_^;)
まさか本人も千年後の世界でこっそり書いた落書きが、
これほど広く見られているとは思いもしなかったでしょう。

彼らとはわかりあえるような気がする…(^_^;)