らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】8 朝寝髪我は梳らじ

今週自分が感じ入った歌は



朝寝髪
我は梳(けづ)らじ
うるわしき
君が手枕(たまくら)
触れてしものを



詠み人知らず



朝の寝乱れた髪を
櫛(くし)で梳(と)いたりはしません
いとしい
あなたの手枕が
触れた髪ですもの



です。



艶っぽい歌はあまり好みの分野ではなかったのですが、
この歌に限っては思わずため息が出てしまい、なんだか切なくなってしまいました。
自分に「艶(あで)」というものを教えてくれた歌かもしれません。

「朝寝髪」「我は梳らじ」という言葉が使えるところをみると、
ひょっとしたら男心を掴むのに長けたかなり経験豊富な女性だったのかもしれないですね。

しかしこの歌は下品なエロティックな感じにならず、あくまで美しくとどまっているような気がします。

与謝野晶子の歌に

ひとすぢに
あやなく君が
指おちて
みだれなむとす
夜の黒髪

というのがありますが、今回紹介した歌よりもう一歩踏み出した感じでエロチックな印象です。
下品ではありませんが、美しいという感じでもないですね。
いい意味でエロチックという感じです。


今回紹介した歌も詠み人知らずです。
千年前の名も知らぬ女性に美しきものを教えられました。

この歌でもう1つ感じ入ったのは、
愛しい人が触れた髪にはその人の私に対する想いが宿っているのだから、
そのままにしておこうという発想です。

モノに人の思いが宿るから大切にしようという意識、今でも日本人の心に脈々と眠っていますね。
ここ数十年の資本主義経済の発展で極めて希薄になったと言われますが。

モノに思いが宿るという美意識、祖先から受け継いだものとして大切にしないといけないような気がします。

それにしても千年前の日本の美意識って、
はかなくて切なくて美しくて思わずため息が出てしまいます。


ただこの歌は女性が愛する男性に送ったもので、
自分は女心がわかっていると言い難い部分も多々あるので(^_^;)、
女性からみると違う印象を持つかもしれません。
ちょっと意見を聞きたいところではあります。