らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2011】7 うちひさす宮道を人は

今週自分が感じ入った歌を紹介します。



うちひさす
宮道(みやぢ)を人は
満ち行けど
我が思ふ君は
ただ一人のみ


柿本人麻呂歌集より


都大路を人は
大勢往き来しているけれど
私が思いを寄せる人は
ただ一人だけ



なにかユーミンの歌詞に出てきてもおかしくないような歌ですね。

選者の加藤千恵さんは北海道出身の20代の歌人の方です。

選者は、詠み人は彼のことを好きだと思っているけど、どこか孤独感も感じさせる。
また「ただ一人のみ」と言い切ってるのは心に迷いがあるのではないか。
わざわざ彼一人だけと断定するのは、迷いとか孤独とかを打ち消すためなのではないかと
いう事をおっしゃっていました。

自分はこの評釈と少々違った印象を持ちました。

何回か歌を読んで感じたのは、
都大路をたくさんの人が往き来しますけど、
その大勢の人々は詠み人と心が通っていないモノに近い存在です。
色で例えばモノトーンでしょうか。
しかし心が通った彼に会うと、大勢の往き来する人とは明らかに違うものを感じる。
人によって爽やかな青系の色か温かい赤系の色か異なるでしょうけど、
モノトーンでない具体的な色、つまり想い人に対してしか感じ得ないものがあることを、
普段なにげに都大路を歩いてそれに気づいたもしくは再認識した。
その詠み人の静かな確信、幸福感といったものを感じたんです。
「ああ、やっぱりあの人は道行く人々とは違う。あの人のことが好きなんだな」というような。