【万葉集2011】14 我のみや夜舟は漕ぐと
今回感じ入った歌は
我のみや
夜舟は漕ぐと
思へれば
沖辺(おきへ)の方に
梶の音すなり
遣新羅使人
我々だけが
夜船を漕いでいると
思っていたら
沖の方でも
(同じように)梶を漕ぐ音がする
パッとこの短歌を一読して感じたのは、情景中の静寂がリアルに感じられる歌だなということ。
詠み人が乗る船は星が出ていない真っ暗な海を航行しているのでしょうか。
漆黒の中で波の音と船の梶の音だけが響きます。
しかし、よくよく耳をすましてみれば、
船の姿は見えぬも遠くから同じように梶を漕ぐ音がかすかに聞こえる。
視界のきかぬ漆黒の波間に、
視界のきかぬ漆黒の波間に、
詠み人の気持ちを重視され、絶えず命の危険にさらされる当時の船の旅の孤独と不安の中で、
同じ海を行く船の音は心強く響いたという意味に重点を置かれていました。
それに自分の人生を重ね、
一緒に進む仲間の存在に気付いて勇気づけられるようなことをおっしゃっていました。
確かに詠み人の心情としてはその通りかもしれません。
しかし今の自分はそういう内面の世界を抜きにして、
確かに詠み人の心情としてはその通りかもしれません。
しかし今の自分はそういう内面の世界を抜きにして、
この歌を何度か口ずさみ、万葉時代の漆黒の静寂の世界にひたりたい気分なのでした。