らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【人物列伝】6 老子 後編

続きです。

老子が言わんとした「無為自然」を自分なりに解釈して言うと
「自己を自然の法則に従い確立し欲望を極めて抑制的にコントロールしていく」
ということになるのではないかと考えています。

欲望の概念には、自己の利益やら名誉欲などのようなものに限らず、
仁義礼智忠孝のようなものも含みます。

何が人間を滅ぼし衰えさせるかを考えるに、
自己の利益を図る行為のみならず、世の中をよくしようとする意欲やら情熱やらも
必ず行き過ぎた結果を招き、破滅を招くと認識したのでしょう。

卑近な例でも、社会を便利にしようという科学技術などの行き過ぎが、
却って多くの人を害する結果を生じることは目にするところです。

現代の資本主義自由主義の世界では人間に利益を与えたり、
自己実現という名の自己の欲望の追求を最大限尊重する立場を採っています。

また医学の発達は乳幼児の死亡率を減らし、特定の病気による死亡を無くし、
老人の平均寿命を延ばしてきました。

その結果ここ100年で人口を急激に増やし、その度に農地を開拓し食料を増産し、
人々が豊かになり求めるに応じて自動車やら電子機器など供給し多大なエネルギーを消費してきました。

いずれも幸福を追求する人類のより良い人生を送るために為された行為です。

しかし老子に言わせるとそれは自然の法則に反した小賢しい知恵なのかもしれません。

それが証拠に地球は今のままでは自然の法則に則った許容範囲を越してしまいそうです。

最近の新聞によると早晩世界の人口は70億に達するとの事。

老子曰わく
「持(じ)してこれを盈(み)たすはその已むに如かず」

酒を満たした杯は手に取れば酒がこぼれて結局飲むことができない


今の右肩上がりの世界を維持するには、僅かな錠剤で必要な栄養を充たす栄養剤などが発明されるか、
宇宙に進出するか、空気と水で全てをまかなえるエネルギー革命が起こるかぐらいしかないでしょう。
人間の英智にかけてその道を突き進むのもひとつの道でしょう。
ただ失敗すれば人類は地球に淘汰されることになるかもしれません。

老子の説く自然の法則に従って余分な欲望を捨て去る(コントロールする)ということは、
個々人が各々自覚することから始まらざるを得ないものです。


老子曰わく
「その安きは持ち易く、その未だ兆さざるは謀り易し。これを未有に為し、これを未乱に治む。
千里の行は足下より始まる。
為す者はこれを敗り、執る者はこれを失う。」


安定していれば保護し易く、まだ兆しがなければ対策を立て易い。
事件は起こらぬ先に処理し、秩序は乱れぬ前に収拾することが肝心である。
千里の長旅も踏み出しは一歩からである。
この自然の道理に逆らい作為と我執にとらわれる者は必ず失敗する。


そうは言っても現代の欲望を最大限追求していく社会の仕組みに慣れた人類が、
うって変わって老子が唱える社会に転換できるかというと、正直少々懐疑的にならざるを得ません。


まだ少々書き切れていない部分がありますので後で少しだけエピローグ書くつもりです。