らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【映画】シャイン ヘルフゴット氏の演奏会

 
先日、映画「シャイン」の記事を書きました。

実をいうと自分は「シャイン」の主人公デビッド・ヘルフゴッド氏の演奏を聴きに行ったことがあるんです。

東京渋谷のオーチャードホールにて、かれこれ十年くらい前になるでしょうか。

曲目はショパンやらリストやらピアノの小曲を集めたものだったと思います。
記事を書くに際して当時のパンフレットを探したがどうしても見つからなかったので、
記憶を辿りながらこの記事を書いてはおります。

映画の公開から数年以上経過していたが、休日ということもあり客席は満員でした。

ステージに登場したヘルフゴッド氏は拍手に応えて何度も何度も浅くお辞儀をし、ピアノの前に座りました。
「シャイン」でヘルフゴッド氏の中年期を演じたジェフリー・ラッシュは、
実にうまく彼の弾き姿をを真似ていたと思います。
映画で「くまんばちの飛行」を演奏したシーンで演じた、
椅子の座り方から弾きながら、たまに横からギャラリーの様子を伺う仕草など、本当にそっくりでした。
https://youtu.be/y-QrSc_Jw3g

肝心の演奏は、というとショパンのスローテンポの曲は間の取り方がかなりユニークでしたが、
アップテンポの曲の捌き方はさすがでした。
映画でも「くまんばちの飛行」などの演奏の見事さは、この映画の見どころのひとつになっています。

ヘルフゴッド氏の演奏はいわゆる整った演奏ではありません。
独特のテンポやミスタッチ(弾き間違い)も散見され、
「ミスのない」演奏を好む人々からの評価は今ひとつではあります。
しかしここぞという部分での、心にズシンと響く一期一会の音にこめられたものには素晴らしいものがあります。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番のCDをいろいろなピアニストのもの10枚ほど持っていますが、
ヘルフゴッド氏の演奏を愛聴しています。
他の著名なピアニストの演奏は素晴らしいのですけれども、得意なレパートリーのうちの1曲に過ぎません。
ほとんどは風のように心地よいけれども、さーっと通り過ぎていってしまうものです。

しかしヘルフゴッド氏の演奏は、通り過ぎない、心にとどまり続ける何かがあるのです。
ひょっとしたら映画を見て感動してそう思い込んでいるのかもしれないと思い、
朝の自分、昼の自分、夜の自分、余裕のある自分、余裕のない自分など
いろいろな自分で聴き比べましたが、いずれにおいても演奏に同じものを感じました。


予定の曲目を終えるとヘルフゴッド氏は一旦幕に引っ込んのですが、
舞台袖にいたギリアン夫人に促されて聴衆のアンコールに応えてくれました。
拍手に応じるように何曲もアンコールに応じてくれて、
いつまでもアンコールが続いてしまうのではないかと思われましたが、
舞台袖にいるギリアン夫人の手招きで最後にお辞儀をして、
演奏会は盛況のうちに終わったのでした。

映画で演奏した曲目はなかったのが少し残念な気もしましたが、
その分彼の新しい魅力を知ることができ良かったと思います。

なお映画内の演奏はほとんどヘルフゴッド氏の演奏によるので、
興味を持たれた方は映画をご覧になって彼の音をお聴きになっていただけたらと思います。
 
 
 日本公演におけるデヴィッド・ヘルフゴット氏